もう10年近く書きためたノートがある。 読んだ本からの引き写しを並べたノートで、最初の2冊はなくしたが、大学に入って書き始めたものが3冊残って、今は6冊目になっている。 100ページのキャンパスノートにびっしり書いてあるので、もうどこに何が書いてあるか自分にもわからないが、時折、考えあぐんだりすると、でたらめに見返してみて、ふと目にとまったものが大きな助けになってくれたりする。 自分は今、ここにある古今東西の人たちと、これまでよりも本格的に、長々と考え事をしたい気分になっている。 自分より考えた人たちの言葉によって考えなければ、自分が滅びるような感覚が永らく心の内にある。 故郷を甘美に思う者は、まだくちばしの黄色い未熟者である。あらゆる場所を故郷と感じられる者は、既にかなりの力を蓄えた者である。全世界を異郷と思う者こそ、完璧な人間である。 最近読んだ柄谷行人の『言葉と悲劇』に孫引きしてあっ