ぶちっという音を聞いた。 その当時、怒った状態を「切れる」とは言わなかった気がするが、今振り返ると文字通り、自分の中の何かが切れた。そして確かに音が聞こえた。 あるソフトハウスの社員だった私は、大手コンピュータメーカーのスペシャリストだと名乗って、ある金融機関のシステム開発現場に入り込んでいた(前回記事『「頼む、死んでくれ」、二重の経歴詐称で地獄に行った派遣SEの話』参照)。その現場で私の直属の上司であったメーカーのプロパー社員は意識的であったのか無意識であったのか定かではないが、ことあるごとに嫌がらせをしてきた。 前回記事に書いた通り、「直属の上司は性格がねじ曲がっているとしか思えなかった」。繰り返される嫌がらせに、私はその陰険上司を憎んでいる、と言っても過言ではない状態になっていた。 とうとう、ある日、私は切れた。拳を握りしめ、陰険上司をにらみつけた。殴ってやる。もうどうなってもかまわ