「もう10年前のことになりますが、娘を探しに行ったあの旅を決して忘れることはありません」。ハノイ市メーリン郡にある古いアパートに住む60歳を超えたタンさんは、硬い表情でゆっくりと話した。 2007年、大人に近づいてきた多くの子供たちと同じように、タンさんの三女であるルオンさんは勉強のために携帯電話が欲しいと父親にお願いした。しかしその後、当時16歳だったルオンさんは見知らぬ人からメッセージを受け取り、遊びに誘われて出かけた際に麻酔を打たれ、中国に売られてしまった。 娘が行方不明になり、家族はパニックに陥った。皆で東北部地方のフート省、クアンニン省、ランソン省、紅河デルタ地方のフンイエン省など北部11省・市のあちこちに赴き、洞窟や路地裏まで捜索した。父親のタンさんは毎日娘を探して通りを歩き続け、インターネットカフェ、バス乗り場、床屋、カラオケまであらゆる場所を探しまわった。警察にも通報したが