『レインツリーの国』(有川浩著・新潮文庫)に収録されている、山本弘さんの「解説」より。 【『図書館戦争』は架空の話ではありません。それはげんに今、現実のこの日本で起きていることなのです。 現実が『図書館戦争』の世界と違うのは、「禁止語」を取り締まっているのがメディア良化委員会という架空の組織ではなく、マスメディア自身ということです。1970年代、一部の人権団体がちょっとした表現にも過激に抗議してきた時期があり、それに対応するために出版社や放送局が自主規制を開始したのです。今ではほとんどの大手出版社、放送局、新聞社に、自主規制語(禁止語)のリストがあります。作家がそれらの言葉を使うと注意され、書き換えや削除を要求されます。 無論、それが本当に差別をなくすのに役立つなら、自主規制もやむをえないでしょう。しかし、現実はまったく逆です。 最大の問題は、自主規制の対象が、文章の内容が差別的かどうかで