「教科書が、意図的ではなく結果的に、特定の宗教的信仰を受け入れさせようとしてしまっている」、「教科書がある宗教を他の宗教より優れているとしたり、逆に宗教にある宗教に対して差別的な偏見を示している」問題について 藤原聖子『教科書の中の宗教 −−この奇妙な実態』岩波新書、2011年。 - 宗教について中立的に語ることはできるか。 ここまで本書を読んでくださった読者は、筆者が「宗教について中立的に語ること」を求めていると思っているかもしれない。たしかに、諸宗教について、一方的な優劣の判断をせず、多角的な見方を教えることの必要性を説いてきた。しかし、そのような教育は「中立的」といえるだろうか。 問題は、「正しい宗教は一つだけだ」と自分の宗教を絶対的と信じている人たちにとっては、それは少しも中立的ではないことである。諸宗教を平等に扱うというのは、それ自体が一つの価値である。それを共有しない人にとって