昨年(2011年)秋、5日間という短い会期ながらも、静かに熱い、不思議な感動に包まれたアート展が開催されていた。東京精神科病院協会が主催する「心のアート展」である。このアート展は、都内の私立の精神科病院に入院・通院する人々が、主に病院内で制作したアート作品を集めた展覧会である。 近年では、精神科医療の臨床現場でも、治療の一環としてアート活動を採りいれることが広がりつつあり、「アートセラピー」という言葉も珍しくなくなってきている。ただし、病院内でのアート活動はあくまで医療行為の一環であり、生み出された制作物もいわゆる「作品」ではなく、院外に持ち出されることは基本的にはない。場合によっては表現者の心のナイーブな部分に触れる自己表現を、不特定多数の人目に触れる公共の場に展示することには慎重であるべきだとの判断が働くのだろう。 それに比べると、この「心のアート展」は少し主旨が異なっていたように思わ
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