何かネタはないかと本棚を漁ってたら、「銀星倶楽部」のディック特集号の中に、ティプトリーのディック評を見つけたので抜き書きしておく。どうして読んでいるのがディックだとわかるのか ジェイムズ・ティプトリー・Jr 山形浩生 訳 たぶん、なによりも、みなぎる異質さだと思う。異質。ディックは異質だったし、いまなお異質だ。そのためにぼくは、ディックの作品をもとめてSFのカタログをめくり続け、新刊が出るごとにその発売を待ち続けたのだと思う。「誰それはほかの人とは考え方からして違っている」というのはよく聞くことばだ。ディックの場合、これは掛け値なしだった。かれの物語だと、次になにが起きるか絶対わからない。 その一方で、かれの登場人物たちは、見たところ普通人として設定されているようだ——例外は、時どき出てくるディック十八番のわめきちらす神経症の女だけれど、そういう女はいつも愛情こめて扱われる。ディックの