15歳で出会ってからこっち、ホールデン・コールフィールドは私にとってずっと、パンク音楽みたいなものだった。正確に言えば『ライ麦畑でつかまえて』という小説は、なのだが、そんな区別は意味がない。小説『ライ麦畑でつかまえて』はホールデン・コールフィールドそのものだし、その小説がくるまれていた白水Uブックスのあの青とベージュのブックカバーも、もうホールデン・コールフィールドそのものなのだ、私にとっては。 とにかくホールデンはパンク。彼もしくは小説の在りかたがパンクだというのではなくて、ある年齢層にパンク音楽とよく似た興奮をあたえてくれる、という意味合いで。 出会ったときにがつんとやられるその感じもよく似ているし、共鳴したいとかなしいほど切実に願う感覚も、ああこの音楽が存在してくれてよかったという深い安堵も、両者はおんなじだ。 そうして、まったくパンク的に、18歳になった私はホールデンのことな