地球上に息づく数千万種の生き物の形の多様さに比べ、人間の作り出す形のなんと単調なことだろう。 駅も、学校も、病院も、みんな真四角な箱になり、都市はにぎやかな墓場となる。 生命の形がその長い進化に根をもつように、潜在的な生命としての記憶を住空間に投影しようとする新しい試み。 私たちが「建築」という言葉を聞いたときにイメージするものは、それがどんな様式のものであれ、この3000年ほどの間に建てられた建造物である。しかし、建築空間のなかに身を置く私たちの身体や知覚には、そのずっと以前からの空間的な記憶が刻み込まれていると私は考えている。それは、個人的記憶が辿れる以前の幼年期の経験が、私たちの性格に大きく影響するのに似ている。私たちが歴史と呼んでいる時間のずっと以前から、人間は自らの居住空間を経験し、その記憶を蓄えてきた。空間を知覚するとき、ひとはそのような記憶を無意識に参照しながら自らの経験を判