インターネット界のトレンド・セッター、クリス・アンダーソンの新著“フリー”。IT関連ではこの夏一番話題をさらったトピックといって良いだろう。タイトルとなっている“フリー”は、“自由”ではなく、いわゆる“無料”の意。最近のウエッブビジネスの傾向である、コンテンツの無料化について論じた本だが、ロングテールという概念を提唱して一躍時代の寵児となったアンダーソンの新著ということもあり、米国での議論は少々過熱気味だった。大学から職場まで、すっかり“フリー”の話題で持ちきり、フリーをテーマにした論文や特集記事がうんざりするほど溢れ、しまいにはタダでも読みたくないという気分になったほどである。 アンダーソンの主張の骨子は比較的単純だ。要約すると、コンピュータのハードの価格の下落とインターネットの世界規模の普及により、その周辺のあらゆるサービスも価格を下げていき、やがては無料が当たり前になるだろう、という