「本当は存在しない」。そんな都市伝説があるドイツ西部ビーレフェルトの中央駅=2013年2月、篠田航一撮影 その話はだいたい、2、3の質問から始まる。 「あなたは、ドイツ西部の都市ビーレフェルトに行ったことがありますか?」 「あなたは、ビーレフェルト出身という人を知っていますか?」 この質問に両方とも「いいえ」と答えると、「そのはずです。だってビーレフェルトなんて町は実在しないのですから」との答えが返ってくる。逆に「行ったことがある」「出身者を知っている」と言えば、「それは何者かの陰謀にだまされているのです。その町はビーレフェルトに見せかけた偽物で、本当はそんな町は存在しないのですよ」と言われる。どちらにせよ、ビーレフェルトは「この世に存在しない」町なのだ。 これは1990年代、ドイツの若者の間で流行した都市伝説だ。だが私がベルリン特派員としてドイツに赴任していた2011~15年にもこの話は