● 2005/04 『 催眠 ------------ 心理学が抱える諸問題で中でも、「催眠」はもてあまし者だ。 意識とその起源についてまじめな仮説を立てようと思うなら、この異常な形の行動規制が突きつける難題から目をそむけるわけにはいかない。 "催眠"が過剰なまでに人を従わせる力を持っているのは、<二分心>を可能にする一般的パラダイムを用いて、意識をもってしては成しえない絶対的な制御を行動に加えることができるからだ。 もし現代人の精神構造が通説とおり遺伝子で決められた不変の特性であって、哺乳類の進化過程で、あるいはそれ以前の段階で生物に備わったものだというなら、催眠一つでこれほどまでに変えられてしまうのは「なぜなのか」。 進化によって発達したとの見方を捨て、意識は文化の要請に従って学習された能力なのだと考え、その根底には古い時代の有無を言わせぬ行動制御の土台が残っていることを想定して初めて