創造的破壊―グローバル文化経済学とコンテンツ産業 [著]タイラー・コーエン[評者]山形浩生(評論家)[掲載]2011年8月7日著者:タイラー・コーエン 出版社:作品社 価格:¥ 2,520 ■文化は常に混合し変化する グローバリズムは地域文化を破壊し、低俗なハリウッド映画とマクドナルドで世界を画一化する陰謀だ、といった議論は多い。だから外国文化の侵入を規制し、自国文化の衰退を防げ、と。 本書は経済学の概念も援用し、そうした見方を実証的に否定する。文化は常に混合し変化する。「弱い」文化が「強い」文化につぶされる一方なんてことはない。大衆に迎合して低俗化の一途でもない。多くの文化保護論はむしろ不自由の強制。総合的に見てグローバリズムは多様化を促進しがちだ。そして自国文化保護の規制は、成功したためしがない。 文化保護論の根底にあるのは、明確な効用判断よりは価値観なのだ、と著者は指摘する。何が望