【ワシントン=山田哲朗】細菌のゲノム(全遺伝情報)を人工的に合成し、別の細菌に移植して働かせることに米国の科学者が初めて成功した。 移植を受けた細菌は、人工ゲノムによって自己増殖したという。「人工生命」の誕生に近づく成果だが、倫理面での議論も活発化しそうだ。J・クレイグ・ベンター研究所(米メリーランド州)が20日付の米科学誌サイエンスに発表する。 研究ではまず、牛の感染症を起こす細菌「マイコプラズマ・ミコイデス」のゲノムをコンピューターでデータ化。この情報に基づき、改めて「ミコイデス」のゲノムの断片を化学合成した。この断片を大腸菌と酵母に入れて遺伝子組み換えでつなぎ合わせ、ゲノムをまるごと再現した。 完成した人工ゲノムを、よく似た細菌に移植したところ、移植された細菌が人工ゲノムの作用で「変身」し、「ミコイデス」のたんぱく質を作るようになった。細胞の「ハードウエア」にあたる細胞質は、移植先の