下山一二三、あるいは「ユーゲニズム」の作曲家 藤井たぎる 下山一二三の作品は、国際現代音楽協会 (ISCM) 主催の世界音楽祭(世界音楽の日々)をはじめとして、国外で数多くの賞や委嘱を受けているように、ヨーロッパで高い評価と名声を博しているが、日本国内ではこれまでほとんど注目されることがなかった。それはまずなにより、下山が音楽外のことにまったく関心を示さず、もっぱら作曲活動に没頭していたせいだろう。たしかに、作曲家が作曲に専念できることがけっしてあたりまえではないような時代と国に生まれた作曲家としては、文化庁の芸術祭優秀賞を何度も受賞し、日本放送協会 (NHK) からたびたび作品の委嘱を受けるなど、ある意味で彼は恵まれていると言えるかもしれない。だがその一方で、時流に乗って最新流行の意匠を追いかけることなどまったく眼中にない下山は、当然のことながら日本の音楽産業やジャーナリズムからほとん