と,ここまでの説明で勘のいい人は気付かれるかもしれないが,どうも傷が感染するという現象は単に,「傷口にバイ菌が入ると化膿する」というような単純な現象ではない。もちろん,細菌がいなければ創感染はそもそも起こらないが,細菌がいれば必ず感染するわけではない。 実は,創感染にとって細菌は「必要条件」だが「十分条件」ではないのである。 皮膚や皮下組織の感染は,皮膚常在菌単独で起こすことは可能である。その場合,組織1gあたり10万個から100万個の細菌が必要とされている。つまり,皮膚常在菌単独で化膿させようとすると,とんでもない量の細菌が必要なのだ。 しかし健康人で,これほどまでに細菌が増えることはほとんどない。ということは,細菌単独で感染を引き起こすのは,予想以上に大変なことであり,ほとんど起こらない現象だといえる。 しかし,実はこれよりはるかに少ない細菌数で感染を起こすことは可能だ。 それは,創面