システムの巨大化、複雑化により、「ヒューマンエラー」に注目が──先生のご著書『ミスをしない人間はいない ヒューマン・エラーの研究』『失敗のメカニズム—忘れ物から巨大事故まで—』などを、大変興味深く拝読させていただきました。 ところで、日本で「ヒューマンエラー」という言葉がクローズアップされ始めたのは、先生のご著書がきっかけだと伺っています。 芳賀 いや、安全問題の専門家の間ではもっと前から知られていました。もともとはアメリカで生れた言葉なんです。1979年の「スリー・マイル島原発事故」に始まり、86年に発生したスペースシャトル「チャレンジャー号」の爆発など、大事故が続発しました。それら事故の分析報告において、人間のうっかりミスや判断ミスが事故の原因として指摘され、「ヒューマンエラー」という言葉が浸透していったのです。 ──そういえば同じ頃、日本でも化学プラント災害が頻発したり、航空業界でも