日本の大企業に背を向ける エリートエンジニア 海外就職を目指すのは、非正規労働者にとどまらない。 ソフトウエアエンジニアの宮本宏二郎さん(40歳)が海外就職に踏み切ったのは3年前だ。12年間勤めた大手電機メーカーを退職したきっかけは、米国シリコンバレーへの赴任だった。 「このまま日本の大企業にいたら、全然使えない人間になるぞ……」 愕然としたのも無理はない。赴任先で立ち上げたチームのボスから、彼は“下っ端”として働くことを言い渡されたのだ。宮本さんのエンジニアとしての能力を、ボスは認めなかったのである。 ソフトウェア業界は典型的な重層下請構造だ。彼が勤務していた東京本社でも、仕事の80%は下請けに丸投げしていた。仕様書の作成まで外注任せで、実務を行う社内エンジニアも契約社員というのが実態。開発部門とはいっても、自分の頭や手を使って働けるチャンスは少なかった。 「評価も、スキルや実績ではなく