アイルランド系の労働者階級が住むボストン南部(通称サウジー)は、日本でも、クリント・イーストウッド監督の『ミスティック・リバー』、ジョ ニー・デップ主演の『ブラック・スキャンダル』などで知られているように、貧しい住民が多い犯罪の巣窟だった。だが、アイルランド系のギャングたちも敬虔なカトリッ ク教徒であり、その矛盾もまたボストンの文化の一つだ。 そのサウジーで育った私の女友達には、7人の兄弟姉妹がいた。姉の1人は高校時代にギャングレイプにあい、もう1人の姉はレズビアンであることを家族に明かした。だが教会も家族も、レイプにあった少女とレズビアンを告白した少女を 「sinner(罪をおかした女、姦淫をおかした女)」として責め、切り捨てたという。その後もずっと自殺願望を捨てられずにいる姉たちを見てきた彼女は、カトリック教会を離れただけでなく、嫌悪している。 映画『ミスティック・リバー』でも少年への