ブックマーク / www.newsweekjapan.jp (319)

  • 競争と伝統で板挟み「自殺大国」韓国の憂鬱

    韓国では気がめいるような自殺のニュースが多い。体面を汚された芸能人や政治家が命を絶ったとか、大学受験に失敗した高校生が橋の上から身投げしたとか、老親が子供に迷惑をかけまいとして自死を選んだとか。 韓国人は仕事でも勉強でも恋愛でも成功し、家族の世話もしなければという大きなプレッシャーを感じながら生きている。こうした心の重荷が自殺率の高さにつながっているようだ。自殺率はOECD(経済協力開発機構)加盟国で最も高く、1日に約39人が自殺する。12年の死因で、自殺は4番目に多かった。 悲劇が多過ぎて感覚が麻痺しそうなところだが、それでも今月初めの事件は国民に衝撃を与えた。テレビのリアリティー番組に出演していた29歳の女性が、収録現場の家のバスルームで自殺。ヘアドライヤーのコードで首をつり、遺書を残していた。 放送局SBSには抗議が殺到。彼女が出演していた番組『チャク(パートナーの意)』は、若い男女

  • トヨタが1200億円の和解金を払った理由とは?

    2009年から10年にかけて複数のトヨタ車に対して発生した「意図せぬ急加速問題」では、豊田章男社長自身が米議会の公聴会で証言した後に、アメリカの運輸省当局は基的な自動車の電子制御に関する欠陥はなかったことを明らかにしています。 その一方で、この問題に関する民事訴訟では、トヨタ側は最終的に和解に応じており、その総額に関しては訴訟費用等を入れると30億ドル(3000億円)以上になると言われています。 更にこれに加えて、先週3月19日にトヨタは米司法省との「和解」に応じており、12億ドル(1200億円)の和解金を支払う代わりに「刑事訴追」を免れることとなりました。 この問題をアメリカの三大ネットワークをはじめとしたメディアは、ニュースなどで大きく取り上げています。また、この決定を受けて豊田社長が会見し、「あくまで顧客が第一」だという声明を出したというニュースに関しても、アメリカでは報道されてい

    トヨタが1200億円の和解金を払った理由とは?
  • ウクライナ問題でアメリカはどうして「ポーカーフェース」なのか?

    先週末、3月14日(金)にアメリカの株式市場はかなり下げました。週末に行われるクリミア半島帰属問題での住民投票を前にして、ウクライナ情勢全般への悲観論が広がったからです。その住民投票では、97%がロシアへの帰属に賛成票を投じたと発表されました。いよいよ、ウクライナの一部であるクリミア半島が、ロシア領になっていくプロセスがスタートしたのです。 ところが、この住民投票のニュースはアメリカでは実に小さな扱いでした。この週末の間、各局は延々とマレーシア航空機の行方不明事件を報じており、例えば30分のニュース番組の場合ですと、最初の15分がこのマレーシア航空機のニュースで、ウクライナ問題はその後の「今日のその他のニュース」で取り上げるという扱いがほとんどだったのです。 住民投票の結果を受けた週明け、3月17日のNY市場の反応も意外でした。前週とは打って変わって大幅高となったのです。ダウは181ドル強

    ウクライナ問題でアメリカはどうして「ポーカーフェース」なのか?
    mark_brown
    mark_brown 2014/03/18
    アメリカとしては(1)ウクライナが最悪の場合にデフォルトになっても困らない、また(2)この地の混乱により化石エネルギーの価格が上昇してもシェールガスも出るので以前ほどには困らない
  • 世界に誇る地下鉄の一元化に大賛成!

    今週のコラムニスト:レジス・アルノー 〔3月4日号掲載〕 東京の地下鉄には、どんな都市も嫉妬するだろう。ほとんどの駅は私の家のキッチンよりきれいだし、車内の床はピクニックができるほど清潔。運行ダイヤはスイス製の時計並みに正確だが、ちゃんと人間味もある。 電車が駅を出る際は、乗客が車内に納まったことを駅員が確認して車掌に伝える。改札には必ず礼儀正しく親切な駅員がいる。乗客の安全は最終的に、機械ではなく人の手に委ねられている。 機械まで礼儀正しい。切符を買うたび、発券機のタッチパネルに現れるキャラクターが「ありがとうございます」と頭を下げる。電子メールすら人に代わって機械が自動発信する現代社会で、人間味あふれる地下鉄は新鮮だ。 九段下駅など、小さな「図書館」が設置された場所もある。乗客が読み終わったを構内の棚に置いていき、別の乗客が借りていく。知の共有が大切にされてきた日ならではの伝統だ

  • STAP細胞事件から見えてきた現代の科学研究の死角

    理化学研究所の小保方晴子氏などのチームが発見したとされる「STAP細胞」について、多くの疑惑が出ている。"Nature"に発表された論文の共著者である山梨大学の若山照彦教授が論文の撤回を呼びかけ、理研は撤回を検討し始めた。まだ人から説明がないので事実関係が確認できないが、論文に重大な欠陥があることは明らかだ。 STAP細胞は、体細胞に弱酸性の液などの「刺激」を与えるだけで初期化され、幹細胞(すべての体細胞に分化できる細胞)になるという驚くべき発見である。幹細胞は受精卵の中にある初期の細胞で、それが分化していろいろな体細胞になるが、特定の部位に分化した体細胞は他の体細胞にはならない。 体細胞から幹細胞をつくって同じ個体を複製するクローンの技術は、1990年代から進んできた。今まで受精卵の胚細胞から幹細胞をつくるES細胞や遺伝子組み換えで幹細胞をつくるiPS細胞はあるが、普通の体細胞を刺激す

  • ガスプロムの脅しは怖くない

    ロシアの国営ガス会社、ガスプロムのアレクセイ・ミレルCEOは先週、ウクライナへの天然ガス供給を削減するかもしれないと警告した。そして数日後には、ガス価格を約37%上げることになるだろうと会社幹部が発言した。 そうなれば、ロシアにエネルギーを依存するウクライナの4〜6月のガス価格は1000立方メートルあたり268・5ドルから368・5ドルに上昇するだろうと、ウクライナのエネルギー相、ユーリ・プロダンは語った。 ガスプロムの脅しの根拠は、ウクライナの料金滞納だ。ウクライナのビクトル・ヤヌチェンコ前大統領が2月末にロシアに逃れて以降、ガス料金の滞納は20億ドルに膨らんでいると、ガスプロムは主張する。ウクライナが滞納分を払わなければ、09年と同じことになると、ミレルは言う。09年1月、ガスプロムは料金未払いと価格交渉の決裂を理由に、2週間ほどウクライナへのガス供給を停止したのだ。 ウクライナ南部の

  • 日本は「貿易立国」を卒業したが、安倍政権はそれを知らない

    2012年末に安倍政権が誕生したとき、「日銀が輪転機をぐるぐる回してお札を印刷すればデフレを脱却できる」という安倍首相の話がもてはやされ、浜田宏一氏(内閣官房参与)は「日銀がエルピーダをつぶした」と断言した。半導体大手のエルピーダメモリの経営が破綻したのは、日銀の金融政策による円高が原因だというのだ。 日銀の黒田総裁が昨年4月に「2年で2倍」の金融政策を打ち出した目的も、インフレで円安にして輸出を増やし、景気を回復させることだった。それから1年たち、1ドル=100円を超える円安水準になったが、どうなっただろうか。次の図は、財務省の発表した2013年までの国際収支(速報)である。 貿易収支の赤字は大幅に拡大し、昨年は(サービス収支を含めて)過去最大の12.2兆円となった。これに所得収支(海外からの配当・金利)などを加えた経常収支の黒字も3.3兆円と、比較可能な1985年以降で最低だ。浜田理論

  • ロシア介入で緊張する中東欧事情

    手を引いて! EU外相理事会が行われたブリュッセルでは、ロシア軍介入に抗議の声が上がった Yves Herman-Reuters ロシア系住民の保護を理由に、ウクライナのクリミア半島に軍を投入したロシア。中欧の政治指導者たちはこれを激しく非難し、戦争が勃発するのではと不安に思う国民を安心させようとしている。 「ヨーロッパは間違いなく、ベルリンの壁崩壊以来で最大の危機に直面している」と、ドイツのフランクワルター・シュタインマイヤー外相は3日に開かれたEUの緊急外相理事会で述べた。「ヨーロッパが新たに分裂する危険がある。ウクライナ情勢は日ごとに緊張が高まっている」 先週末には、ドイツのアンゲラ・メルケル首相とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の間で、緊迫した電話会談が行われた。メルケルの広報担当によればメルケルはプーチンに対してはっきりと、ウクライナ侵攻は国際法に違反するものであり、軍事介入

  • アーミテージ氏と櫻井よしこ氏に異議あり!

    共同通信によれば、ワシントンの日通人脈のベテランである、リチャード・アーミテージ元米国務副長官は2月27日に、ワシントンのシンクタンク「日米研究インスティテュート(USJI)」が開いた会合で、安倍晋三首相の靖国神社参拝について「中国が外交的に利用できる」という観点から「反対だ」と述べたそうです。 また、従軍慰安婦問題に関しては、「現代の日の人権保障や日国民に対する高い国際評価を傷つけている」と指摘し、こちらに関しても安倍政権に注文を出したと伝えています。 私はその場にいませんでしたし、発言の原文を検討したわけではありませんが、少なくともこの配信内容や、他の新聞の電子版の記事を総合すれば、このような発言があったのは事実のようです。 中国を利するから危険だとか、慰安婦問題は日の評価を傷つけるという主張は、私がこのブログや先月の朝日新聞のインタビューでも述べてきた内容に合致します。アーミ

    アーミテージ氏と櫻井よしこ氏に異議あり!
  • スイス国民投票で閉ざされる国境

    EUなどからの移民を制限する提案を国民が可決。国境を越えた自由な往来を保障したEUの理想の終わりの始まりか スイスで今月9日に実施された国民投票の結果が、ヨーロッパ中に大きな衝撃をもたらしている。 EU加盟国などから流入する移民を制限するという提案が僅差で可決されたのだ。投票は右派の国民党が主導したもので、西部のフランス語圏が反対、人口の多い東部のドイツ語圏が賛成と、国内をほぼ二分した。 投票結果は、ヨーロッパで高まる移民排斥ムードを示しているだけではない。EU結成の大きな成果の1つは、域内の国境を自由に越えられるとする取り決めだが、この方針が続くかどうかという点に不安の影を落とした。スイスはEUに加盟していないものの、ヨーロッパ諸国間の国境検査を撤廃したシェンゲン協定には加盟している。 英ガーディアン紙は「移民の規制は、これまでスイスに自由に入って働くことのできたEU市民にも適用される」

  • 想像を絶していた!中国鉄鋼の過剰生産

    経済成長の波に乗って拡大の一途をたどってきた中国の鉄鋼業界。だが成長の鈍化に伴ってこの数年、鉄鋼業界の設備過剰が深刻化。にもかかわらず、中国最大の鉄鋼生産量を誇る河北省では、老朽化した生産施設の閉鎖をはるかに上回るペースで設備の新設が続いている。 中国鉄鋼工業協会(CISA)の副事務総長、李新創(リー・シンチョアン)によれば、鉄鋼業界の余剰生産能力は3億トンという「想像を超える域」に達している。これは、昨年のEUの生産量の2倍近くに相当するという。 景気の減速局面にあるにもかかわらず、今年の鉄鋼製品の需要は前年比3・2%増の7億1500万トンという緩やかな上昇を続けている。そのため、シェアを伸ばしたい鉄鋼メーカーは生産能力を引き続き拡大。中国の鉄鋼生産量は今年も3%増加するだろうと、CISAは予測している。 もちろん、当局も問題は認識しており、老朽化した施設を閉鎖するようトップダウンで対策

  • 中国を凌駕する北朝鮮のレアアース

    世界最大のレアアース鉱床が北朝鮮に──。昨年12月、北朝鮮で地質調査を行った英企業はそんな発表をした。 英領バージン諸島を拠点とするSREミネラルズ社によれば、平壌の西北に位置する鉱床に推定2億1600万トンのレアアースが眠っている可能性がある。 全世界で確認されているレアアース埋蔵量(推定1億1000万トン)の約2倍だ。 レアアースは携帯電話から誘導ミサイルまで多くの最先端テクノロジーに使われている。極めて希少というわけではないが、採掘規制が欧米ほど厳しくない中国が現在、シェアの90%以上を占めている。中国はこの独占に近い状態を利用して、政治的に対立する国を牽制してきた。 北朝鮮に大量のレアアースをはじめとする鉱物資源が眠っている可能性があることは以前から知られていたが、SREミネラルズ社の試算は従来の予想を大きく上回る。同社の読みどおりなら北朝鮮のレアアース資源は中国の約6倍で、理論上

  • アップルには巨額買収は必要ない

    独自路線 アップルは買収せずとも最高の商品をもっと提供できる(写真はiPhone5s) Toru Hanai-Reuters グーグルとフェイスブックが最近、相次いで巨額買収をしたことで、アップルも同じようにするべきだという声が強まっている。慎重になり過ぎて潤沢な手元資金を遊ばせておくよりも、派手な買収でもしたほうが有効活用できる、と。 この考えに懐疑的なジャーナリストのジョン・グル―バーは正しい。自らの企業文化に背いたときに限って、企業は間違いを犯す傾向がある。アップルは、質的に企業買収で成長するような会社ではない。アップルも買収はするが、規模は控え目でアップル製品に特定の技術を組み入れることを目的にしている。 それに対し、写真共有アプリ「インスタグラム」や、スマホ向けアプリ「whatsApp(ワッツアップ)」を買収したフェイスブックは、大規模で有名な企業を買収するが、基的に先を見据

  • 人々はスマホに自分の運命を賭け始めた?

    今この瞬間、中国で暮らしているわけではない人に、中国の生活においてスマートフォンがどれだけ重要であるかを言葉で説明して理解してもらうのは難しいかもしれない。 もちろん、「日だってスマホなんてとっくに普及しているし、必需品になっている人は多いよ!」と思うだろう。でも、日で暮らしているわけではないわたしが言ってもこれまた理解してもらえないだろうが、北京や上海で暮らす人のスマホ依存率はたぶん、東京を超えている。 わたしも昨年の旧正月前に初めてのスマホを買ってから、ニュースや知り合いのジャーナリストが推薦する情報などをスマホで受信するようになって、原稿テーマの情報源はスマホからが5割、ツイッターやフェイスブックなどSNSが3割、購読しているメディアのニュースレターが2割になっている。ツイッターとスマホが別なのは、中国ではツイッターへのアクセスがブロックされるためにその利用に「壁越え」用ソフトが

  • 駅の「南北理論」が通用しなくなった東京

    今週のコラムニスト:マイケル・プロンコ 〔2月18日号掲載〕 初めて東京にやって来たとき、新しくて複雑な環境を理解するために自分なりの理論をいくつか編み出した。その中の1つが、どの駅も南口には個性的で気取りがなくて、少しごちゃごちゃした古い日が息づいているというもの。一方の北口にはデパートやバスロータリーがあり、モダンで小ぎれいな日が広がっている──。 この理論は大抵当てはまったが、完璧ではなかった。何年もの間、私は持論にしがみついて、歌舞伎町は新宿駅の南側だと言い張った(当は北東なのに)。東京駅の場合は、南のほうへずっと歩いて行ってスナックや焼き鳥の屋台、雀荘が現れるまで高層ビル群は見えないことにした。この理論が気に入った私は、どの駅でも北側と南側に行けば、東京のまったく違う2つの顔に出合えると信じていた。 しかしやがて、私が以前利用していた戸塚と品川の駅の雑然とした南側にまで、し

  • 日本とドイツ、「戦後の国のかたち」の違いとは何か?

    2月24日にロイターが配信した記事によれば、3月末に主要国の首脳が一同に会する「核安全保障サミット」への参加にあたって中国の習近平主席は、ドイツを訪問するそうです。ロイターによれば、ドイツによる「第二次大戦への反省」に敬意を表すると共に、安倍政権への牽制を意図しているというのです。 このドイツとの比較論に関しては、確かに日の内外に「日ドイツの謙虚な姿勢に見習え」というような声があるのは事実です。その意味で、仮にロイターの報道が的を得ているのであるにしても、習近平主席の発想は決してオリジナルではありません。 では、当に日ドイツのケースに見習うべきなのでしょうか? ある部分はそうだと思います。ですが、ある部分は違います。ここは少し議論の整理が必要であると思います。 まず、ドイツでは「第三帝国という国のかたち」が消滅し、分断の苦しみの後に新たな国家を建設していったわけです。そのような

    日本とドイツ、「戦後の国のかたち」の違いとは何か?
  • キム・ヨナ採点騒動と韓国「恨」の文化

    いじめ? ヨナ自身は「いい演技をしたことに満足している」とコメントしているが Issei Kato-Reuters 世界中がため息をついた。ソチ五輪の女子フィギュアスケートで、ロシアのアデリナ・ソトニコワが韓国のキム・ヨナを抑えて金メダルを獲得したことに、驚きと困惑が広がっている。その衝撃度がいかほどかは、試合を見た者なら分かるだろう。 ロシア人とジャッジ以外には、韓国の「国民の妹」が見せた完璧な演技は、1度だけ着氷の乱れがあったソトニコワを上回って見えたはずだ。IOC(国際オリンピック委員会)はすでに韓国から抗議の手紙を受け取っており、採点に異議を申し立てるオンライン上の署名活動に約200万人がサインしたことを認めた。 200万人の署名は、韓国人以外にも採点を疑問視している人が多くいることの表れだろう。しかし、韓国国民が抱いている感情はそんなものではない。 ヨナが流した涙を見た韓国人たち

  • 中国富裕層の国外大脱出が始まった

    国や経済の先行きに不安を抱くアメリカ人が「カナダに移住してやる!」などと口にするのは、半ばお約束。しかし、実際にアメリカを出ていく人はめったにいない。 その点、中国人は違う。近年、特に富裕層の間で、より良い暮らしを求めて国外に移り住む人が増えている。最も人気のある移住先はアメリカだ。 中国の資産家393人を対象にした民間研究所「胡潤研究院」のレポートによれば、中国富裕層(資産1000万元〔約1億7000万円〕以上)の64%が既に国外に移住したか、移住を計画している。また、超富裕層(資産1億元〔約17億円〕以上)の3分の1は、国外に拠点を持っているという。 子供を留学させたいと考える富裕層の割合も80%に上る。留学先としては、大学はアメリカが1番人気、高校はイギリスが1番人気、アメリカが2番人気だ。中国のエリートたちは、自国の硬直的な教育システムを評価していないのだ。 「裸官」たたきの影響

  • 「ケネディ姫」のわがままが日米関係を混乱させる

    共同通信によると、NHKがキャロライン・ケネディ駐日アメリカ大使へのインタビューを申し込んでいったん了承されたが、2月になって大使館が百田尚樹氏(NHK経営委員)の発言を理由に断ったという。これは「大使とワシントンの意向」とのことだが、大使が経営陣の発言を理由にNHKの取材を拒否したのが事実だとすれば前代未聞である。 大使が問題にしたのは、百田氏が東京都知事選挙の応援演説で東京大空襲や原爆投下を「大虐殺」と呼び、「東京裁判はそれをごまかすための裁判だった」という発言らしい。これは歴史認識として間違っているが、彼の個人的意見であってNHKの見解ではない。こんな理由で政府機関が取材を拒否したら、報道は成り立たない。 ケネディ大使の暴走は、今に始まったことではない。彼女は1月にも、ツイッターで「米国政府はイルカの追い込み漁に反対します。イルカが殺される追い込み漁の非人道性について深く懸念していま

  • 歌舞伎町案内人はあの遊就館をどう観たか

    今週のコラムニスト:李小牧 〔2月11日号掲載〕 このコラムで先月、中国の防空識別圏設定のお陰でぎくしゃくする日中関係を打開するため、安倍首相に「チャンスがあれば開き直って堂々と握手するずうずうしさを持つべきだ」と説いた。 ただ、握手どころか首相として7年ぶりの靖国神社参拝という「ビンタ」を中国に浴びせたところを見ると、せっかくの「歌舞伎町大学」教授の名講義も残念ながら首相の耳には届かなかったらしい。 「軍国主義の心臓部」を訪れた安倍首相に「中国人の中の中国人」李小牧は怒り心頭──日人の皆さんはそう思っているかもしれない。でも、私は今回の事態を必ずしも否定的には考えていない。 昨年秋、日のある財団の招きで来日した中国人ジャーナリストと東京や関西を見学した。京都や奈良では金閣寺などを見たのだが、彼にとっても私にとっても、何より印象深かったのは靖国神社の遊就館を見学したことだった。 今年で