月例経済報告の表現は、これまでもいくつかのドラマを生んできた。ここで取り上げようと考えているのは、私自身が実見し、または私自身が当事者であったバブル崩壊後の1990~96年にかけての景気判断である。この時期は、景気の山(91年2月)と谷(93年10月)を一つずつ含んでいる。つまり、バブルが崩壊して景気が後退した後、その後景気が一時的に回復した時期である。 さて、山と谷が一つずつあるということは、景気の転換点が2回あったということなのだが、その2回の局面それぞれで、月例経済報告の判断が批判を浴びることになる。すなわち、91年の山については、景気後退の認識が不十分だったという批判を受け、逆に、93年の谷については、景気回復認識が早すぎたという批判を受けることになったのである。 今回は、91年2月の山以降の景気認識について振り返ってみる。 91年2月以降の景気後退 日本経済は、91年2月以降、景
1.放蕩息子 経済学には、「比較優位」「囚人のジレンマ」など様々な法則や定理があるが、最もユニークな名前がつけられている定理はBecker(1974)による「放蕩息子の定理」(Rotten-Kid Theorem)だろう。放蕩息子と聞けば、新約聖書に出てくる放蕩息子のたとえ話を思い浮かべる人も多いだろう。二人の兄弟がいて、父親から財産の半分を生前贈与としてもらった弟が放蕩をつくしてその財産を使い切り、飢えそうになったところで実家に帰ってくる。父はその息子を歓迎し祝宴を開く。兄の方は父に不満を述べるが、父はそれをたしなめる。 「放蕩息子の定理」とは、このような父に息子に対する利他的な心があり、息子はそれを知っていたならば、息子はそもそも放蕩をしないという定理である。 2.統一的世帯モデル どうして、そんな意外な結論になるのだろうか。実は、それこそが、家族の中でお金の配分がどのように決まるのか
【人口1億人の維持】 9月24日に、安倍自由民主党総裁は、アベノミクスは「第二ステージ」に入ったと宣言し、新しい三本の矢(「希望を生み出す強い経済」、「夢をつぐむ子育て支援」、「安心につながる社会保障」の三つ)を発表しました。その際に目標として示されたのが、「一億総活躍」社会です。これは、「少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も、人口1億人を維持する」ことを「国家としての意思」として明確にしたものであると表明されました。 【人口減少の経済的影響】 確かに人口減少の問題は、現在日本が直面する最大の問題です。特に経済成長の面では深刻な影響をもたらしています。例えば、国立社会保障・人口問題研究所が2012年1月に発表した「日本の将来推計人口」によると、出生率が反転せず、低水準を続けること等を前提にした出生中位・死亡中位のケースでは、2010年に1億2806万人あった人口が、2060年に8674万人
日本の高齢者終末期の医療のあり方は、世界の常識とはだいぶかけ離れているようだ。日本の医療はともかく延命重視であり、患者がどんな状況であってもともかく一分でも一秒でも長く命を永らえさせることが使命だと思っている医師も多いという。そのため最後の最後まで濃厚な医療を行なおうとし、その間に次々に合併症が起こり、高齢者が苦しみながら最後を迎えるケースが多い。そうした結果を生む延命措置は欧米やオーストラリアでは倫理的に問題があるとされ、行われていない。『欧米には寝たきり老人はいない:自分で決める人生最後の医療』を著した宮本顕二、宮本礼子両医師は、そう指摘し「日本では医療の名のもとに高齢者の虐待が行われている」と断言し、高齢者の人権を尊重するために「延命至上主義」から脱し日本の医療の重心を「緩和医療」へシフトすることの必要性を強調している。 近づく「多死時代」の現実への問題意識の欠如 日本は世界最長寿国
「中国のような国ではなく我々が世界経済のルールをつくる」 (オバマ米大統領) 12カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が難航を重ねた上で大筋合意となった翌日、10月6日のオバマ大統領の発言である。大国の首脳が特定の国を引き合いにこうしたストレートな物言いをするのは滅多にないこと。波紋を呼んだが、要は、世界のルール作りの大役を中国には渡したくない、ということなのであろう。米国の強い思いが伝わってくる。 米国はこの春、アジアインフラ投資銀行(AIIB)を巡って中国に外交上の痛烈なパンチを食らった。それが発言の背景にある。AIIBは運営方式が世界ルールと違う。中国主導で中国のための国際銀行で、当初はG7クラスの先進国の参加はないとの見方もあった。ところが、幕を開けると、英国、ドイツ、フランスにオーストラリア、ニュージーランド、それに韓国、台湾などの安全保障上、米国と緊密な関係のところまで
2015年8月に発表された内閣府の『平成27年版 経済財政報告』には「四半世紀ぶりの成果と再生する日本経済」という勇ましい副題がついている。また同年6月にまとめられた『「日本再興戦略」改訂2015』も「未来への投資・生産性革命」という、これまた勇ましい副題を冠しており、「日本経済はかつての強さを取り戻しつつある。今は、デフレ払拭のための構造改革としての第3の矢の成長戦略を大胆かつスピード感をもって実行している最中だ」と自賛している。 だが、前者の『経済財政報告』は一方で、後半の第3章「イノベーション・システムと生産性の向上」においては、1990年代初頭以降の経済停滞が生産性の伸び悩みと重なっており、その生産性伸び悩みの背景には日本企業の依然、消極的なイノベーションへの取り組み姿勢があると述べ、日本経済が「再生」したとはとても言えない現状を憂慮してもいる。安倍晋三政権が誕生してまる三年が経と
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く