(丸山豊『月白の道』(創言社、1987年(新訂増補版))) 太平洋戦争中、北ビルマのミイトキーナで戦い、辛くも生還した軍医による回想記。著者は戦後、医院を開業するとともに詩人としても活躍し、1991年、その業績を称えて、郷里久留米市が「丸山豊記念現代詩賞」を創設している。 北ビルマ・雲南戦線における過酷な戦場の一つ、ミイトキーナで、第56師団(龍(たつ)兵団)の歩兵団長である水上源蔵少将の側近として戦った軍医中尉の戦記である。戦後、現代詩人として高い評価を得た人物による記録であるためか、どことなく叙情的で幻想的な雰囲気を持つ作品であり、そうした作風が、ある意味では戦いの凄惨さをより一層際立たせている。 太平洋戦争開戦後、著者の属する坂口支隊(坂口静夫少将指揮)はミンダナオ、ボルネオ、ジャワ上陸戦に勝利し、その後、龍兵団本体に再合流して北ビルマの戦いに参加する。昭和19年、第18師団(菊兵団