長谷川 綾 本社編集局 編集本部 <1997年8月入社。本社調査部、根室支局を経て2002年9月から現職場> 「うちの業界は、先行き暗いよな」。新聞記者を目指す方々に向けたメッセージを書くことになった私に対し、先輩記者がつぶやいた一言だ。確かに新聞業界を取り巻く環境は厳しい。速報なら、テレビ、インターネットにかなわない。新聞は昔より読まれなくなった。部数が劇的に増えることも望めない。でも、新聞記者は夢がある仕事、だと思う。人生のドラマを切り取る仕事だからだ。 ドラマは身近にある。私は、北方領土を間近に望む根室市の支局に約3年半務めた。そこである夫婦のドラマを取材した。 根室半島の太平洋側にある花咲港に、半世紀続く店がある。「ホームラン焼き」という野球ボール型のお焼きと、ラーメンの店だ。私はお焼きが大好物で、港に取材に行くと必ず10個か20個買い占め、食事代わりにしていた。店を経営