リンク先引用文末尾、「生活」と「能力」のアポリア。 それは賃金制度が解決すべき「分配の正義」と「交換の正義」のダブルバインドの、現代における特殊日本的な現われだとひとまずはいえる。 賃金は労務の対価として市場における「交換の正義」に従うべきであるが、他方で労働者が生計を立てる原資として「分配の正義」にも従うべきである。「働きに応じて」、同時に「必要に応じて」。だが「働き」と「必要」とは多くの場合矛盾する。「働き」の乏しさと「必要」の大きさとは、しばしば同じ要因の帰結だからである。これが賃金制度が普遍的に直面するダブルバインドである。 賃金制度はこの矛盾を整合的に解決する必要がある。ひとつは欧米の職務(ジョブ)型社会が導出した解である。すなわち、あくまで賃金は市場における「交換の正義」に従わせ、「職務」の対価として位置づける。同一労働同一賃金の原則である。労働市場の集団的プレイヤーとしての労