パリの青空に美しい弧を描き、65mの白いラインを越えた場所に落下した。65m80。投げた瞬間いったと言う手応えもあったのか。北口榛花は記録を見るとガッツポーズをした。
初出場の世界選手権で銅メダル。 今春、大学を卒業した出口は、日本生命に所属した。オフィスは甲府支社。トレーニングの拠点は変わらず、母校・山梨学院大の道場である。「なんか、大学5年生みたいですけどね」と笑う。会社の理解もあり、通常業務をこなしながら練習に励み、カナダ代表としての試合があれば、それを優先することができる。 社会人になっても、出口の勢いは止まらなかった。その後も3大会連続でオール一本勝ち。国際大会連続一本勝ちは26にまで達した。 「今までこれだけ連戦を重ねて、しかも、いろんな国に行くこともなかった。試合をたくさんすることで、学べたものもたくさんありました。移動や宿泊も含めて、知らない場所で試合をするのは大変でしたけど、逆に『やるしかない』と開き直ることもできた。その心の余裕を持てたのも大きかったですね」 そして今年9月、初出場となった世界選手権(アゼルバイジャン)では、銅メダルを
凱旋なるか。日本生まれの女子柔道カナダ代表選手、出口クリスタが、11月24日に行なわれるグランドスラム大阪(57kg級)に出場する。 出口はカナダ人の父と日本人の母を持つ。1995年10月29日、長野県塩尻市で生まれ、3歳から柔道を始めた。地元・長野の松商学園高校に進むと、1年生にしてインターハイ(52kg級)優勝。高3時には全日本ジュニア(57kg級)を制するなど、将来を嘱望される期待のホープだった。 そして高3の秋、2020年の東京五輪開催が決定する。出口は強く思った。 「オリンピックに、どうしても出たい」 しかし、現実は厳しかった。2014年の春、強豪の山梨学院大学に進学。大会に出場しても、まったく満足のいく成績を残せなくなった。 このままじゃまずい。オリンピックなんか絶対無理じゃん。不安と悩みを抱えながら、くすんだ鉛色の思いをかき消そうと一心に柔道に打ち込んでも、一向に結果は出ず、
6月12日、ベルーナドームの西武-広島の交流戦で、西武の左腕・隅田知一郎(ちひろ)が「マダックス=100球未満での完封」を達成するのを観た。プロ野球を見始めて50年近くになるが、マダックスを意識して観戦したのは初めてだった。 9回2死まできて隅田の投球数は96球、打者は小園海斗、隅田は2ストライクから最後は空振りに切って取り、捕手の古賀悠斗が一塁の元山飛優に送球して3球三振でぎりぎりの「マダックス」を成立させた。8連敗中の西武にとっては、長いトンネルを抜ける1勝でもあった。 3年目の隅田は1年目からローテを維持してきたが、当初は制球力に難があった。しかし昨年のアジアチャンピオンシップでは見違えるような投球を見せた。不振が続く西武だが、隅田は希望の星の一人だろう。 「マダックス」の元祖マダックスは78球で完投したことも 「100球未満での完封」をマダックスと呼ぶのは、MLBで355勝を挙げた
バットの芯で捉えた“いい角度”の打球が空中で失速し、フェンス手前で外野手のグラブに収まる――熱心なプロ野球ファンなら、今季どこかでそんなシーンを目撃した記憶があるのではないだろうか。 異例の事態「ホームランが消えている」 6月14日の試合を終えた時点で、セ・リーグの平均打率は.235、1球団あたりの1試合平均得点は3.02。同パ・リーグの平均打率は.240、平均得点は3.22と、近年まれに見る“投高打低”だった昨季をも下回る超低水準となっている。打率3割を超える打者はヤクルトのサンタナ(.319)、ソフトバンクの近藤健介(.341)、日本ハムの田宮裕涼(.335)と、セ・パを合わせて3名しかいない。 さらに深刻なのが「野球の華」とされるホームランの減少だ。過去半世紀の記録を遡ると、規定の反発係数(※打球の飛距離を左右するボールの跳ね返りやすさ)を満たしていない“違反球”が使用された2011
深刻な“投高打低”が続く今季のプロ野球。あの悪名高き“違反球”時代をも下回る、過去半世紀でもっとも低水準な打撃成績の主要因は、いったいどこにあるのか。 衝撃のデータ「打者が打てていない」 株式会社DELTAのアナリスト・宮下博志氏は、データを根拠に「投手のレベルアップ説は考えにくい」「なんらかの理由でボールが飛ばなくなっている可能性が高い」としながらも、“犯人探し”よりも現状を正しく認識し、対策を講じることこそが重要だと語る。 「.600台前半の平均OPS(出塁率+長打率)というのは、プロ野球においては“極端に投手有利な数字”だと思います。得点が入らないゲームばかりでは、多くのファンは退屈を覚えるはずです。ラビットボール時代のような過度に打者有利の環境に調整が入ったように、あまりにも投手有利な現状も改善されるべきだと考えます」
GP2試合を連勝し、世界選手権でも優勝候補の一人だったシャオ・イム・ファ。その彼が世界選手権のSPで2度ミスし、19位スタートになったのは予想外のことだった。プレッシャーが大きすぎたのだろうか。 「SPもフリーも、滑る前に感じたプレッシャーは同じでした。GPファイナルで感じたようなストレスはなかったのですが、攻める気持ちが十分でなかったのかもしれません。SPの後とても失望して、自分に腹をたてていました。フリーでは、とにかくできることを全てやるということに集中しました」 バックフリップを決意したのは「跳ぶ12秒前」 フリーではコレオシークエンスの部分で、禁止技のバックフリップを入れた。バックフリップをここで見せるといつ決めたのだろうか?
アルヒラルに要求した(とされる)付帯条件が、これまた凄まじい。部屋数25以上の豪邸、ランボルギーニ、ベンツなどの高級車8台(車種まで指定している)、プライベートジェット、使用人5人の常駐などなど――。これほど多量の物質とサービスを求める理由は、恋人ブルーナさん(彼の子供を妊娠中で、来年初めに出産予定)と一緒に住むほか、両親と妹、さらには個人スタッフ数人が同居したり頻繁に訪れるからだ。 さらに、「自身のSNSでサウジアラビアに関する(肯定的な)ニュースを発信する度に、50万ユーロ(約7900万円)を受け取る」という報道もある(フランスのスポーツサイト「フットメルカート」)。 今月上旬、アルヒラル入りの噂が流れたことがあった。ただし、それは「移籍直後、古巣バルセロナへ貸し出される」という条件付き。バルセロナが財政危機にあり、なおかつファイナンシャル・フェアプレーに抵触する恐れがあることから捻り
メジャーリーグのマウンドへ上がった日本人投手はこれまでに49人を数える。その中で投手の勲章とも言える勝利数、奪三振数でいずれもトップに君臨してきたのは先駆者・野茂英雄だった。彼は道を切り開いただけでなく、後へ続く者に道標を残した。その偉大なる先人の記録をついにダルビッシュ有が超えた。 8月14日、サンディエゴ。渾身の力を込め投じた95.2マイル(約153.2キロ)の直球にオリオールズ・ウリアスのバットが空を切った。野茂が築き上げた1918個の三振を上回る日本人最多の1919奪三振。ダルビッシュは先輩への敬意を込め、コメントを残した。 「うれしいですね」 このとき、野茂氏は場内の球団ブースから後輩の偉業を見守っていたと聞く。2021年にダルビッシュがパドレスに移籍してから、ふたりは球団アドバイザーと現役投手の関係に変わり絆を深めている。ダルビッシュが残したこんなコメントからもそれは窺える。
2023年6月、パーキンソン病を患っていることを明かしたヒクソン・グレイシー。無敗のままキャリアを終えた“伝説の格闘家”は、負けられない戦いや過酷な運命とどのように向き合ってきたのか。30年来の親交があるフォトグラファーの長尾迪氏が、過去に撮影した写真とともに、ヒクソンの知られざる素顔をつづった。(全2回の1回目/後編へ) ヒクソンが「強さ」のアイコンだった時代 「2年前にパーキンソン病と診断された」 今年6月、ヒクソン・グレイシーが遠縁にあたるキーラ・グレイシーのインタビューに応じ、自らの病気と症状を公表した。 ヒクソンが日本で試合をしたのは1994年から2000年までの6年間で、5つの興行に出場。試合数はトーナメントも合わせて9試合、そのすべてが一本もしくはKO勝ちだった。だが、彼の凄さは試合内容だけではない。試合に臨む姿勢や佇まい、彼が発する言葉、対戦相手へのリスペクトなど、常に真摯
スポーツマンシップがいま現在問われている もう一点、高校野球の価値として挙げられるのが、スポーツマンシップを身に付けることです。読者の皆さんにも耳なじみのある言葉で、多くの方が、スポーツマンが身に付けるべき態度という認識を持っているかもしれませんが、実際にはそれだけではありません。スポーツマンシップには、人間としての基本的な在り方という意味合いがあり、特にスポーツにおいてそれを身に付けやすいと言えます。 以前、指導者としてスポーツマンシップについて学ぶ機会があり、その価値観に深く共感しました。相手、ルール、審判を「尊重」し、敬意を持って接する。「勇気」を持っていろいろなプレーに挑戦し、強い相手にチャレンジしていく。どんな結果になろうとも、「覚悟」を持って、きちんとそれを受け入れる。こうしたことがスポーツマンシップだと認識するようになりました。 特に負けたときが重要で、そうした難しい状況でこ
「会場やオンライン試合観戦をしている観客の一部に、選手の体の特定部位を強調する写真撮影、画像編集等を行い、これらの画像をSNSや、ブログ、WEBページ等、多くの人の目に触れる場所に投稿している人物がいることを確認しています。また、これらの投稿に対し、選手に対する卑猥な内容のコメントやリプライを投稿する人物がいることも確認しています。これらに追随する形で、選手の社会的な評価を低下させるコメント等を投稿する人物がいることも確認しています。 これらのすべての行為は、撮影の対象とされた選手の人格権を侵害します。 これにより選手は現に著しい精神的苦痛を受けています。試合に出場すると再び同様の行為の対象にされるのではないかと不安に感じ、安心して試合に臨むことが困難な状況にもなっております。 ワールド女子プロレス・ディアナ株式会社では、弊社興行中並びに所属選手が他団体参戦中にご撮影いただきました写真の使
以前は35歳までは欧州でやれたらいいなという気持ちがあった。どんな形であれ、カタールW杯までは欧州でやると決めていた。欧州で長くやることは選手みんなの目標で、長谷部(誠)さんや岡ちゃん(岡崎慎司)、(吉田)麻也のように同年代でまだ頑張っている選手もいるし、彼らの存在は刺激にもなっていた。 それでも、これが自分の人生だし、自分のタイミングだった。欧州に12年半いたし、複雑な気持ちになるのは仕方がない。サウジアラビアに行ったクリスティアーノ・ロナウドも似たような気持ちだったのかな。欧州というのは僕にとってそれほど思いの詰まった場所だった。日本に戻り、セレッソのユニフォームを着てプレーしている今はもう気持ちはすっきりしているけれど。
相撲、どこに行ったら見られるの? 屋根のある球場だけでなく、選手たちのほとんどは日本に来ること自体が初めて。だからこそ目にするものすべてが新鮮だった。ジーマはうれしそうにこう続けた。 「日本の文化も食べ物も気に入ったよ。スシに、ラーメン。何ていう名前だっけな、あのラーメンは……。とにかく辛くておいしかった。日本の文化や伝統もいいね。お寺とか、細かいディテールにこだわるところとか」 ディテールとは? 「例えばレストランで、箸の置き方とかもてなしの仕方とか。何でもきちんとした決まり、約束事がある。(土俵に上がってから儀式がある)相撲もそうだよね。実はすごく相撲を見に行きたいと思っているんだ。どこに行ったら見られるの? 連れていってほしい」 そう言って人懐っこそうな笑みを浮かべた。 チームの大黒柱は「本業・消防士」 チェコ代表は、昨秋にドイツで行われた予選A組(ヨーロッパ・アフリカのチームが出場
日本一過酷と言われる山岳レース「トランス・ジャパンアルプス・レース(TJAR)」。富山県魚津の日本海から日本アルプスを縦断し、静岡市大浜海岸の太平洋に至る約415km(累積標高差約27,000m)の距離を、制限時間8日間で駆け抜けるエクストリームなレースだ。 今年の夏、そのTJARで「4日17時間33分」という大会新記録で初優勝したのが土井陵(たかし)だ。剱岳や薬師岳を縦走する北アルプスを1日で越え、中央アルプスも1日で通過、多くの選手が歩きを織り交ぜるロード区間もほとんど走っていた。しばらくは更新されないと考えられていた「4日23時間52分」(望月将悟/2016年)という大会記録を6時間も縮めたのだ。 その背景には、走力や山の経験値といったベースに加え、綿密な食料計画や睡眠の取り方があるようだった。自らを「ミニマリスト」と語る土井のスタート時の装備は水分を除いてわずか3.5kg。他の選手
2006年、高校3年生で当時の女子1500m日本記録をマークして、「スーパー女子高生」と呼ばれた小林祐梨子さん。現在開催中の世界陸上に出場している田中希実が2020年にその記録を更新するまで約14年間にわたって日本記録を保持していた。 小林さんは2008年の北京五輪、09年のベルリン世界選手権に出場し、2015年に現役引退を表明。引退後に中学2年生から14年間付き合った男性とゴールインし、現在は2人の息子を育てながら、解説者やラジオパーソナリティーとして活躍している。 妻となり、母となった33歳の小林さんに、“若手アスリート”として注目されたゆえの葛藤や、引退後の自身を支えた家族への思いを聞いた。全2回の前編/後編は#2へ
2021年5月、SKシュトゥルム・グラーツ対レッドブル・ザルツブルクの試合会場を訪れたオシム。体調は良かったり悪かったりだが、眼光の鋭さは健在だ イビチャ・オシムに電話をしたのは日本がシドニーでオーストラリアを破り、1998年以来7回連続のワールドカップ本大会出場を決めた数時間後だった。試合がオーストリアでも生中継されるのを筆者が知ったのは、当日(ヨーロッパ時間で3月24日午前)になってからだった。そのためオシムに伝えることができず、彼は日本が会心の戦いでオーストラリアを下した試合を見てはいない。それでもオシムは日本の突破を心から喜び、同時にロシアの侵攻が止まないウクライナの状況を憂えるのだった。 ■■■ ――元気ですか? 「ああ、元気だが君はどうだ?」 ――私もまあまあです。 「あなた方は勝ち点3を得たのだな」 ――ええ、とても満足しています。 「予選を突破できたのだから。ジャーナリスト
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