レーニンの食へのこだわりは、政治へのそれにくらべればはるかにささやかなものだったが、スターリンはウォッカよりコニャックを好み、フルシチョフはビーフステーキが好みだった。一方ゴルバチョフはといえば、朝食に5種類ものカーシャ(おかゆ)のメニューがあった。 政治と正反対 ウラジーミル・イリイチ・レーニンは、政治においては大変な「グルメ」だったが、美食に関しては完全に「近視眼的な」人物だった。彼の妻であり同志でもあったナジェージダ・クループスカヤは、回想録で、家庭の献立には「昼食」「夕食」という言葉がなく、病人やダイエット中の管理食のようにしばしば「食餌」と書かれていたという。 「レーニンは自分が何を食べたかを覚えていないばかりでなく、この料理とこの料理のどっちが好きか、と聞いても要領を得ない答えが返ってくるほどでした」。著書『レーニンは何を食べていたのか?』の中で、ロシア料理史家ヴィリアム・ポフ