しっかりした保存・管理体制で防げたはずの極彩色壁画の劣化 まもなく初夏を迎える明日香が、また賑やかになりそうだ。キトラ古墳から剥ぎ取られた壁画の「子(ね)」「丑(うし)」「寅(とら)」が、5月9日から25日まで飛鳥資料館で特別公開される。4月16日、3枚の壁画は厳重に木箱に梱包(こんぽう)され、美術品専用のトラックで飛鳥資料館に運ばれた。 同じ4月16日、宮内庁は高松塚古墳から剥ぎ取られた極彩色壁画を、5月31日から6月8日まで明日香村内の修理施設で一般公開すると発表した。1日500人程度という制限はあるが、往復はがきで申し込めば、修理施設内の作業室に並べられている壁画を見学用通路からガラス越しに見学できるそうだ。 考えてみれば、高松塚古墳の被葬者の霊は哀れだ。同様に、キトラ古墳の被葬者の霊も可哀想だ。1300年前、被葬者たちは奥津城で永久(とわ)の眠りについたはずだが、20世紀になって無