――学内で教授がめった刺しにされるという、前代未聞の事件。 狙われた教授は、周囲が認める「中大サラブレッド」だった。―― 200分の1。 中央大学の校舎内で殺害されているのが見つかった、理工学部教授高窪統さん(45)は、集積回路(IC)の専門家だった。 高窪さんは2001年、自らまとめた論文で「電子情報通信学会論文賞」を受賞した。大正6年設立のこの学会は、分野別に年間12本の論文を表彰しているが、エントリーには他の研究者からの推薦が必要で、その候補作の中から受賞を勝ち取る確率は200分の1。共著とはいえ30代半ばで受賞したことは、高窪さんの研究が優れていたことを示している。 自らの研究だけではない。年に5、6回、全国で開催される学会の研究会の運営にも積極的に携わった。 「一回の研究会は2、3日間。準備には相当の手間がかかるし、あくまでボランティアの活動。高窪さんは大学での仕事の空き