たった一人自分から受賞を知らせた84歳の恩師 ――どこでその存在を知ったのですか。 村田 あまりに小説が書けないので、書店で小説を書くための本が並んでいるコーナーに行ったんです。もともとはそういうコーナーに行くと傷ついてしまうことが多いので避けていました。というのも「小説を書いて丸儲け」みたいなタイトルが並んでいて、自分が大事にしているところを踏みにじられたようで絶望的な気持ちになることが多くて、でもあまりに書けないので何か救いがあるんじゃないかと思ってちょっとウロウロしていたら、宮原先生の『書く人はここで躓く!』という本があったんです。それはタイトルに全然いやらしさがないし、「書く人」というところに、自分を書き手として扱ってくれている感じがありました。こうすれば文学賞に合格する、というようなタイトルの本は見ると眩暈がして吐いてしまうほど辛かったんですが、宮原先生の本は純粋に小説を書くこと