『東京プリズン』の作家・赤坂真理さんが、文学者として日本の近現代史を読み直し、いまを生きる私たちの「盲点」を鋭くつく連載第4回。今回は「トランプ現象」を駆動した物語とは何だったのか、ある日本人男性がもらしたトランプへの「共感」を手掛かりに解き明かします。 〔→連載第1回はこちら http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52922) トランプはなぜ大統領になれたか 「ドナルド・トランプを文学にたとえると?」 アメリカ文学研究者の巽孝之氏に会う機会があり、思わずこんな問いを発した。 この問いに対する、巽の答えほど、トランプが大統領になれたわけとして、納得できたものはなかった。 * ドナルド・トランプがなぜ、アメリカの大統領になれたか、わたしにはわからずにいた。 知的な説明をいくつか聞いてきた。どれももっともではある。が、どれも、どこかが弱かった。 よくあるのは、