2007年11月08日02:30 カテゴリ書評/画評/品評 ギークが褒めぬにゃ訳がある - 「ウェブ時代をゆく」を読む まだちょっと早いかも知れないが、「ウェブ時代をゆく」の一番の論点について書いておきたい。 P. 118 (草稿:直感を信じろ、自分を信じろ、好きを貫け、人を褒めろ、人の粗探ししてる暇があったら自分で何かやれ。 - My Life Between Silicon Valley and Japan) ところで、日本の若い人たちのブログを読んで思うのは「人を褒める」のが下手だなということである。つまらないことで人の揚げ足を取ったり粗捜しばかりしている人を見ると、よくそんな暇があるなと思う。もっと褒めろよ、心の中でいいなと思ったら口に出せよ、と思うことも多い。 とりあえず「日本人」はおいておいて、ギークは滅多に人を褒めない。それがなぜなのかをここで考えてみる。 ウェブ時代をゆく
2007年11月07日15:45 カテゴリ書評/画評/品評 「ウェブ時代をゆく」を読む - Vantage Point 実は本書の内容に関する私の感想は、池田さんのそれとほぼ一致する。 池田信夫 blog ウェブ時代をゆく 年をとると、本を読むのが速くなる。書いてあることの大部分が既知の話なので、飛ばして読めるからだ。逆にオリジナルな学術書は、1冊読むのに1ヶ月かかることもある。だから私の場合、本の価値はそれを読むのにかかった時間にほぼ比例する。 それでは、なぜ 404 Blog Not Found:一識者から梅田望夫へ - 書評 - ウェブ時代をゆく - 会社員さんのコメント この本に対する見解が池田さんと弾さんでは180度違っているように感じられますが、それはどうでもよろしい。 私が興味深く思ったのは「この見解の違いはどこから来るのか?」です なのか。 ウェブ時代をゆく 梅田望夫 私と
2007年11月06日00:00 カテゴリ 一識者から梅田望夫へ - 書評 - ウェブ時代をゆく いつもどおり献本御礼。 ウェブ時代をゆく 梅田望夫 初掲載2007.11.05;発売開始まで更新 一回で書評し切れる本ではないが、これだけは最初に申し上げたい。 これは褒めざるを得ない、と。 本書、「ウェブ時代をゆく」は、今や「ウェブ進化論」の著者として「あちら側」も「こちら側」も知らぬなしの梅田望夫の最新作にして、「シリコンバレーに住む一コンサルタント」だった著者が、はじめて「梅田望夫」を全面に出して書いた一冊。 なぜ「褒めざるを得ないか」といえば、100%それが理由だ。 目次 - 新刊「ウェブ時代をゆく」11月6日刊行 - My Life Between Silicon Valley and Japanより 序章 混沌として面白い時代 一身にして二生を経る/オプティミズムを貫く理由/「群衆
カフカ短篇集 スポンサード リンク ・カフカ短篇集 カフカの「掟の門」は、ほんの数ページの作品なのに、強烈に印象に残り、何度も反芻しながら、意味を考えさせられる。読書会でも開いたら何時間でも討論できそうである。 「掟の門」。男がいる。彼は「掟の門」の前で、大男の番人に阻まれ入ることができずにいる。「いまはだめだ」と言われ続けて、男は長い年月、門番が入ることを許してくれるのを待ち続けた。そして年をとって命が尽きはてようとしている。 「「この永い年月のあいだ、どうして私以外の誰ひとり、中に入れてくれといって来なかったのです?」いのちの火が消えかけていた。うすれていく意識を呼びもどすかのように門番がどなった。「ほかの誰ひとり、ここには入れない。この門は、おまえひとりのためのものだった。さあ、もうおれは行く。ここを閉めるぞ」」 そこから人生の教訓のような普遍的なものを読み取ることができるし、カフカ
日本語の源流を求めて スポンサード リンク ・日本語の源流を求めて 日本語タミル語起源説の大野晋が研究の集大成を一般人向けに平易にまとめた新書。 「北九州の縄文人はタミルから到来した水田耕作・鉄・機織の三大文明に直面し、それを受け入れると共に、タミル語の単語と文法とを学びとっていった。その結果、タミル語と対応する単語を多く含むヤマトコトバが生じたのである。」 日本語とタミル語は文法も単語も共通点が非常に多い。物の名前が同じというだけならば、そういうこともあるかなというレベルなのだが、「やさしい」「たのしい」「かわいい」「にこにこ」「やさしい」「さびしい」「かなしい」などの感情を表す言葉までほぼ同じなのである。 さらには日本的情緒の代表格「あはれ」までタミル語に同義でみつかるのだ。五七五七七の韻律を持つ詩もタミル語にある。日本固有と感じられるものが実は南インドからの伝来のものであったというの
ステータス症候群―社会格差という病 スポンサード リンク ・ステータス症候群―社会格差という病 これは抜群に面白い社会学研究。 世界中で社会格差と人々の健康には明らかな相関があることがデータで示されている。貧しい階層よりもお金持ちの階層のほうが病気をせずに長生きする。両極の中間層では階層があがるにつれて確実に健康状態がよくなっていく勾配が見られる。さらに学歴や社会的地位や身長で人々を比べてもほぼ同様の結果になる。高いほど健康なのだ。これがステータス症候群である。 なぜ社会格差は健康格差につながるのかがこの本のテーマである。 所得と健康の関係は一見、当たり前のようにみえる。健康ならば働けるので高所得になりやすい。お金があればよい生活ができて医者にもかかれるから、なおさら健康になる。逆に不健康ならば働くことができず、一層貧しくなる。医者にもかかれないから健康は悪化する。そういうことなのではない
そろそろ本気で継続力をモノにする! スポンサード リンク ・そろそろ本気で継続力をモノにする! ジョギング、早起き、筋トレ、ダイエット、貯金、ブログ、試験勉強、楽器、英会話など習慣を長く続ける秘訣を、仕事術の研究家でブログ「シゴタノ!」著者の大橋悦夫氏が本にまとめた。脱3日坊主のしかけ満載。 人が習慣化したい物事には、 1 続ける系 早起き、ジョギング、歯磨きなど 2 ためる系 家計簿、ダイエット、ブログなど 3 マスター系 英会話、資格試験、楽器など の3タイプがあると分類し、それぞれ「例外魔人」「不安小僧」「スランプ仙人」という大敵がいるという。各タイプに応じた傾向と対策が解説されている。要は「やる気の問題」は「しくみの問題」だということである。 私は飽きっぽい性格なので毎日同じことを継続するのが苦手だ。だから、このブログが4年以上も毎日続いているのは自分でも意外である。これに関しては
ひとりっ子 スポンサード リンク ・ひとりっ子 現代SF最高の書き手グレッグ・イーガンの最新刊。順列都市、宇宙焼失、万物理論、ディアスポラ、などイーガンの大作は圧倒的である。読む側にもそれなりの読みとおす決意と読書時間の確保が必要である。邦訳はなかなか出ないので、出るともったいなくて、おいそれとは読めないというファン心理もあったりする。 この短編集はそういう意味では、大作の合間の小さな仕事をまとめたものという風で読みやすい。収録作品に目新しい設定というのは特にない。脳のソフトウェア化というイーガンお得意のテーマが繰り返し出てくる。 人間は機械なのか。現代科学の主流は人間機械論である。どんな機構かは諸説あるにせよ、人間の脳は精巧にできた機械であり、精神活動はその機械の電気化学反応のプロセスということになる。魂は肉体とは別に存在するとは科学者は言わない。脳という機械の複雑度が高いから現在のテク
雷の季節の終わりに スポンサード リンク ・雷の季節の終わりに やってしまった。 電車乗り過ごしである。 終電だったので3つ先の駅からタクシーで帰るはめになった。 寝過ごしたわけではない。年に一回あるかどうかの本に熱中しての読み過ごし。 すべてはこの本のせいだ。 デビュー作「夜市」で見せた才能の片鱗が、この初長編でさらに開花している。恒川 光太郎の作品は今後全部買う作家リストに入れることにした。代替不可能な魅力がある。 「異世界の小さな町、穏(おん)で暮らす少年・賢也。「風わいわい」という物の怪に取り憑かれている彼は、ある秘密を知ってしまったために町を追われる羽目になる。風わいわいと共に穏を出た賢也を待ち受けていたものは-?」 Web2.0はWebのあちら側とこちら側の話だが、これは世界2.0、こちら側世界とあちら側の異界の話である。それは天上にあるわけでも、地の底にあるわけでもなく、隠れ
告白 スポンサード リンク ・告白 あまりに面白すぎて危険なため、盆暮れ正月連休中に読むことをおすすめします。 明治時代に起きた、実際の大量殺人事件「河内十人斬り」。幼子まで含めて10人を惨殺する残虐事件でありながら、熊太郎・弥五郎の復讐劇は、盆踊り「河内音頭」のテーマとして歌い継がれてきた。 この小説「告白」は、ひとづきあいが苦手で、性根が駄目人間の城戸熊太郎が、なぜ村人を恨み大殺戮に至ったのかを、生い立ちから綴った独白である。 「 安政四年、河内国石川郡赤阪村字水分の百姓城戸平次の長男として出生した熊太郎は気弱で鈍くさい子供であったが長ずるにつれて手のつけられない乱暴者となり、明治二十年、三十歳を過ぎる頃には、飲酒、賭博、婦女に身を持ち崩す、完全な無頼者と成り果てていた。 父母の寵愛を一身に享けて育ちながらなんでそんなことになってしまったのか。 あかんではないか。 」 こんな出だしで始
陰翳礼讃 スポンサード リンク ・陰翳礼讃 谷崎潤一郎が日本の伝統美について語った古典的名著。日本的情感の本質をとらえたエッセイ。 難しい本なのではないかと少し構えて読み始めたが、意外にも、とてもわかりやすい内容でびっくりした。 「漱石先生は毎朝便通に行かれることを一つの楽しみに数えられ、それは寧ろ生理的快感であると云われたそうだが、その快感を味わう上にも、閑寂な壁と、清楚な木目に囲まれて、眼に青空や青葉の色を見ることの出来る日本の厠ほど、恰好な場所はあるまい。そうしてそれには、繰り返して云うが、或る程度の薄暗さと、徹底的に清潔であることと、蚊の呻り声さえ耳につくような静かさとが、必須の条件なのである。」 「思うに西洋人のいう「東洋の神秘」とは、かくの如き暗がりが持つ不気味な静かさを指すのであろう。われらといえども少年のころは日の目の届かぬ茶の間や書院の床の間の奥を視つめると、云い知れぬ怖
詩のこころを読む スポンサード リンク ・詩のこころを読む アマゾンのカスタマーレビューで5つ星連発。私も5つ星をつけたい名著。 詩人 茨木のり子が、主に日本の詩の名作を取り上げ、評論する。 じわっとくる、ぐっとくる、日本語がある。 谷川俊太郎、吉野弘など国語の教科書にでていた記憶のある、有名な詩も含まれているのだが、この年になって読み返して、違う解釈で感動できる詩が多いなと感じた。「空にすはれし15の心」なんて15歳の時にはまったく違う印象だった。 普段、ビジネス文書や研究論文ばかりを相手にしていると、アタマにでなく、ココロに響くことばの使い方があることを忘れてしまいがちである。ときどき言語感覚をリフレッシュするのに詩はいいなと思う。 「思索の淵にて」のときにも思ったのだが、詩は連続して読まないのがいい読み方かもしれないと思う。前の作品の強烈な印象が残っていると、次の作品鑑賞の邪魔になる
神聖喜劇 スポンサード リンク ・神聖喜劇 (第1巻) 超弩級の絶対的な傑作。大西巨人の小説「神聖喜劇」の完全漫画化。こんな物凄い作品があるとこれまで知らなかったのが不覚であった。全6巻を夏休みに読破。読者を選ぶ作品だが、以下の概要で興味のある人にはおすすめである。 「一九四二年一月、対馬要塞の重砲兵聯隊に補充兵役入隊兵百余名が到着した。陸軍二等兵・東堂太郎もその中の一人。「世界は真剣に生きるに値しない」と思い定める虚無主義者である。厳寒の屯営内で、内務班長・大前田軍曹らによる過酷な“新兵教育”が始まる。そして、超人的な記憶力を駆使した東堂二等兵の壮大な闘いも開始された」(原作の紹介より) 東堂太郎は一度読んだら忘れない驚異的な記憶力の持ち主であった。軍隊の規則書を丸暗記している彼は、不条理な軍隊生活や上官たちの言動に疑問を持つ。そしてその矛盾を言葉で訴え始めることから生じる個人と組織の闘
2007年10月24日16:30 カテゴリ書評/画評/品評SciTech ちとせの岩の年代測定 - 書評 - 神と科学は共存できるか? 日経BPより、なぜか日をおいて二回献本を受けた。 神と科学は共存できるか? STEPHEN JAY GOULD著 新妻昭夫訳 新妻昭夫 / 古谷圭一解説 [原著:Rocks of Ages] 「早く書評せよ」というメッセージかも知れないのだが、簡単に評せる本ともまた言いがたい。 本書、「神と科学は共存できるか?」は、今はなき科学者、そして科学エッセイストであるGouldの遺作。その内容は、邦訳のタイトルの通り、宗教と科学は共存できるかという、科学が生まれてから今日まで続いている、重い問題。 目次 日経BP書店|商品詳細 - 神と科学は共存できるか?より 本書について 狩野秀之 第1章 お定まりの問題 前口上 二人のトマスの、ひとつの物語 二人の父親の運命
« 静止画や動画に水面反射効果を適用する Sqirlz Water Reflections | Main | 肖像写真 » 書評:脳・こころ |書評: 企画・発想| 書評:文化・文明|書評:経済・経営 |書評:子 供・教育|書 評:小説・戯曲|書評:ネット活用 |書評: 仕事・管理|書 評:メディア論|書評:その他|書評:思想・哲学 |書評 :文章・表現|書評:認知・心理 |書評:神 話・宗教|書 評:科学・技術|書評:社会・世間 |書評:教養 ・雑学 2006年度 年間オススメ書籍ランキング ノンフィクション部門 2006年度 年間オススメ書籍ランキング フィクション編 2005年度 書籍売り上げラン キング ベスト20 2005年度 年間オススメ書籍 ランキング ベスト20冊 2004年度 人気記事ベスト10 アクセス数が多かった記事とは? 2004年度 人気書評ベスト10 アクセス数
寺山修司ラジオ・ドラマCD「犬神歩き」「箱」「鳥籠になった男」「大礼服」「まんだら」 スポンサード リンク このCDを教えてくれた小鳥ピヨピヨ(a cheeping little bird)さんに感謝。 1960~70年代、寺山修司にとって20代から30代にかけて精力的に制作したラジオドラマの復刻シリーズ。本シリーズには1時間近い大作を1話収録したCDと、20から30分物×2話収録したCDの2種類がある。どれもクオリティがとてつもなく高い。 長時間のラジオドラマをじっくり聴くというのは、読書とも映画鑑賞とも違う、独特の体験だ。かなりの集中力を必要とする。その代り、物語の世界にどっぷり浸ることができる。 この最初の2枚は短編×2本収録系なのでとっつきやすい。 ・寺山修司ラジオ・ドラマCD「犬神歩き」「箱」 「幻の寺山修司のラジオ・ドラマ、奇跡の復刻! 放送当時、事件にもなった寺山修司の想像力
いよいよ11月6日に書き下ろし新刊「ウェブ時代をゆく」(ちくま新書)が刊行されます。 アマゾン、紀伊国屋で予約が始まりました。 この本は「ウェブ進化論」以降、本欄読者の方々をはじめ膨大なネット上の同書への感想をすべて読みながら、一年半かけて考え続けてきたことの全てです。目次は次の通りです。 序章 混沌として面白い時代 一身にして二生を経る/オプティミズムを貫く理由/「群衆の叡智」元年/グーグルと「産業革命前夜」のイギリス/学習の高速道路と大渋滞/ウェブ進化と「好きを貫く」精神/リアルとネットの境界領域に可能性/フロンティアを前にしたときの精神的な構え 第一章 グーグルと「もうひとつの地球」 営利企業であることの矛盾/グーグルはなぜこんなに儲かるのか/奇跡的な組み合わせ/グーグルの二つ目の顔/「もうひとつの地球」構築の方程式/「経済のゲーム」より「知と情報のゲーム」/利便性と自由の代償として
ラストシーンがグッと来るんですよ。サスペンスがあって盛り上がって、その解決がガーッとあって、悲しくて切ないラストがある。杜王町にぴったりだし乙一さんにぴったりだし。ハッピーエンドとは違った豊かな感じがあるんですよ。
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