JASRACに信託譲渡された音楽著作物についていえば、特定の歌手がこれを歌唱することを拒む権利は作詞家にも作曲家にもありません。作詞家がその歌手に対してどんなに憤っていてもです。著作権等の集中管理というのはそういうものです。気に入らない歌手に歌唱されたというだけでは、「名誉又は声望を害する」とまではさすがに言えませんから、著作者人格権の問題も発生しません。 ですから、少なくとも「語り」の部分を加えずに「おふくろさん」を森進一が唄う分には、川内康範さんはこれを止めさせることは法的にはできません(力関係を利用して森進一をパージすることはできるかも知れませんが、それはそれで法的に問題が発生しそうです。)。 なお、「歌唱パート」の前に語りを加えることが一般的に歌詞の同一性保持権を侵害するかのような説明がなされていることもあるようですが、それはいかがなものかなあと思います。