鳥になって空高く飛び立てば、目の前には見晴らす限りの爽快な景色が広がることでしょう。空を飛んでいる鳥が、地上を斜め下に見下ろしているように描かれたパノラマを「鳥瞰図(ちょうかんず)」といいます。日本では大正から昭和にかけて、こうした鳥瞰図が鉄道旅行の広まりとともに、携帯に便利なガイドとなりました。鳥瞰図を観光案内に用いたアイデアマンは吉田初三郎(よしだ はつさぶろう:1884~1955)という京都出身の画家で、最盛期には犬山の蘇江(そこう)画室を拠点にして、全国各地の鳥瞰図を描きました。そして彼の作品に魅せられ、その収集と研究に打ち込んだ人物が愛知県出身の小川文太郎氏(おがわ ぶんたろう: 1898~1985)です。戦災をこえて今に伝わる同氏のコレクションにより、大正・昭和の日本を空からじっくり眺めてみませんか。今年はちょうど吉田初三郎の生誕130年にもあたります。さあ、レトロな日本の空旅