日本の法人税は国際的に見て負担が重いので、引き下げるべきだという議論がよく聞かれる。ところで、法人税とはいったい誰が負担しているのだろうか。もし、税率が引き下げられたならば、その恩恵は誰が受けるのだろうか。こうした素朴で、かつ興味深い問いに対して、土居丈朗教授は今回の論文「法人税の帰着に関する動学的分析-簡素なモデルによる分析-」で、動学的な分析手法モデルを用いながら具体的な回答を試みている。 経済学の理論では、法人税率の上げ下げは労働者の負担が変化することにつながる。負担が変化するスピードは、労働分配率などによって異なるため、法人税の税率や労働分配率の議論を行う際には、「法人税を負担しているのは誰なのか」ということを、きちんと認識することが必要だと土居教授は強調する。 法人税を負担しているのは誰か? ――どのような問題意識から、この論文を執筆されたのでしょうか。 法人税の帰着とは、法人税