私の母は専業主婦で、田舎の出身だったせいか、ほとんど冷凍食品や惣菜を買わない人だった。外食というと、高いレストランや寿司、あるいはラーメン屋やうどん屋に行くくらいで、私はファミリーレストランというものに行くことがないまま成人した。ほとんど母(と父)以外の手による料理を食べることなく成長したのだ。 そのせいで、私はとても外部の味に弱い人間に育ってしまった。 例えば、小学校の行事などで泊まる、所謂「青少年課外活動センター」的な施設で出される料理の数々が全く喉を通らない。一般に家庭料理と呼ばれる料理、例えば煮物や漬物、卵焼き、味噌汁、酢の物。これらの料理の「美味しい」の幅が完全に母親の味で狭められてしまって、全く適応できなかったのだ。「食べ物を粗末にするのは下品なことだ」と理解はしていても、美味しいと思えない料理を食べる苦痛ほど、子供にとって大きな苦痛はない。 ああいった施設で出る料理は決して美