高齢者というだけで賃貸契約を断られ、住まいの見つからない「漂流老人」が増えている。司法書士の太田垣章子さんは「『貸さない家主が悪い』と言われるが、民間の家主だけが大きなリスクを負うのはあまりに酷だ。たとえば、私が関わった83歳の男性は、賃貸住宅をゴミ屋敷にしていて、家主には数百万円の負担がかかった」という――。
立憲民主党への評価が下げ止まった 潮目が変わる、とはこういうことを言うのだろうか。永田町の関心事は岸田政権の激しい失速に集中している感があるが、この中で野党第1党の立憲民主党に、ようやく一定の肯定的な評価がみられるようになってきた。というより、否定的な評価の「打撃力」が衰えてきたのだ。 そのことを強く感じさせるのが、これまで立憲民主党批判のパワーワード化していた言葉の「無効化」だ。代表的なのが、立憲と共産党の選挙協力を揶揄する「立憲共産党」という言葉である。2021年の前回衆院選で立憲が公示前議席を割って以来、外野が声高に言い募るこの言葉は、立憲の戦闘力を大きく下げることに寄与していた。 こうした言葉の「打撃力」が落ちてきた。同時に、2021年衆院選以来、「下げ」トレンドにあった立憲の評価が、ようやく反転しつつある。 いきなり「政権を取って代わる」とまではいかなくても、野党の存在感が高まり
1970年代後半、ソニーの「ベータマックス」とビクターの「VHS」による家庭用VTRの規格争いが起こった。この戦いで、なぜソニーは敗北したのか。「ベータマックス」の開発・マーケティングの責任者だった盛田正明さんと神仁司さんの共書『人の力を活かすリーダーシップ』(ワン・パブリッシング)より紹介する――。 ビデオ戦争の“戦犯”が語る 実は私は1967年頃家庭用ビデオテープレコーダー『ベータマックス』の開発・マーケティングの指揮を執る責任者でした。ですから、私は(ビデオ規格・ベータマックス対VHS争いの)“戦犯”と言っていいです。 あの頃、ビデオは、世の中で放送用のものしかありませんでしたが、家庭用のビデオを作ろうと井深さんが発想して、試行錯誤の末、最初にできたのが、『U-マチック』という結構大きなものでした。井深さんが、「ポケットに入るサイズにしろ」と言って、さらに小っちゃいものを作ろうとして
「ボドイ」と呼ばれる不法滞在ベトナム人の犯罪が増えている。この問題を扱った本格ノンフィクション『北関東「移民」アンダーグラウンド ベトナム人不法滞在者たちの青春と犯罪』(文藝春秋)を書いた中国ルポライターの安田峰俊さんは「ボドイを生んだ技能実習制度は、職業選択や移動の自由を制限しており、基本的人権を奪っている。しかし、いまやボドイの存在なしに、日本経済は成り立たない」という。ライターの國友公司さんが聞いた――。(後編/全2回) ボドイが盗んだ桃はテキ屋には流れていなかった (前編から続く) ――ボドイが農園から盗んだ大量の桃が、駅前などで見かけるテキ屋的な販売者に流れたという説が一時期流れていました。「なぜ駅前で売っている桃はあんなに安いのか」という疑問を抱いていたと人もいたと思います。この説を信じた人もいたと思うのですが、実態はどうだったのでしょうか? 【安田峰俊】ボドイが桃窃盗の犯人と
認知症の初期症状「物盗られ妄想」 身の回りのものが見つからないとき、誰かに盗られたのではないかと思い込んでしまうことがある。 これは認知症の初期によくある症状の一つで、「物盗られ妄想」という。自分が認知症だと思いたくなかったり、家族に迷惑をかけたくないあまり、自分のものは自分で管理をしなければと頑張ったり、そうした中で、自分がしまった場所を忘れてしまうことが原因で起きてしまう。 認知症でなかったとしても、あるべきところから大切なものがなくなれば、誰しも不安になってしまうに違いない。例えば、出かけている最中に、さっきまであった財布がカバンの中からなくなっていたとしたら? どんな人でも盗まれたと思ってしまうのではないだろうか。認知症の方は、それが日常的に起きやすい状態であるということを覚えておいてほしい。 ある日、フランス在住の平井さんから、SOSのメールが届いた。日本の実家に住んでいる認知症
国語が苦手な子の共通点は「テレビを見ていないこと」 教室で、この子は語彙ごい力がないな、ちょっと理解力に欠けるな〜と感じる子に、「テレビを見ていますか?」と聞くと、返ってくる答えは大抵、「家にテレビがありません」「ほとんど見せてもらえません」のどちらかです。 「教育に悪いから、子どもにはテレビを見せません」という方がときどきいらっしゃるのですが、私は、博学で賢い子を育てるために、テレビは欠かせないツールだと考えています。 なぜなら、人は一度も見聞きしていないものについて、他人とイメージを共有することができないからです。 見たこともない龍や天使の姿を、私たちがほぼ同じようにイメージできるのは、どこかで龍や天使の絵や像を見た経験があるからですよね。 仮に、「チナルータ」という動物について想像してくださいと言われても、他人と同じ「チナルータ」を頭に思い描き、共通の認識を持つことはできないでしょう
不吉な死の予言 村に来て何日かたったころだった。降りつもる雪を踏みしめて、イラングアが私の家にやってきた。 グリーンランド最北の村シオラパルクには今、四十人ほどしか住んでいない。二十代の男はわずか数人で、他の連中は隣のカナックや南部の都市にうつってゆき、日本の山村と同じように過疎化が進んでいる。イラングアは、わずか数人しかいない村の若い男連中のひとりだ。 彼が私の家に来るのは、めずらしいことではない。イヌイット社会には伝統的にプラットという、文字通りぷらっと他人の家を訪問してコーヒーを飲んだり、ぺちゃくちゃ喋しゃべったり、賭け事に興じたりする交流、暇つぶしの習慣がある。私は片言の現地語しか話せないし、客人をうまくもてなせるタイプでもないのでプラットにやってくる人は少ないのだが、人づきあいのいい彼は毎日のようにやってくる。そして誰それが猟に出て海豹あざらしを二頭獲ったとか、今日は天気が悪いか
「10年に1度の厳しい寒さ」で大ピンチ 電気は供給されて当たり前——。日本に住んでいる限り誰も疑いようのない常識だ。しかし、世界に目を向ければ、最近では中国、インドなどが電力危機に陥り、先進国の欧州でもLNG供給不足に端を発して電力危機が発生した。 こうした一連の電力危機は2021年の世界のトレンドと言っても過言ではない。 日本でも2020年冬にLNG不足などから電力不足に陥るリスクが生じ、電力卸市場では価格が高騰した結果、複数の新電力が経営危機に陥る事態になった。 一過性のものと思われたが、ここに来て、日本の電力不足や価格高騰のリスクは、構造的な問題であるとの深刻な懸念が浮上してきた。 特にこの冬は「10年に1度の厳しい寒さ」と見込まれ、電力会社は老朽化した火力発電所を稼働するなどして寒波による電力需要増大に備える。 「カーボンニュートラル」に向けて再生可能エネルギーの普及がクローズアッ
「ことばと心の謎」に迫る研究のきっかけ ある日、町の乳幼児健診から帰ってきた心理士の妻が、ビールを飲みながら「自閉症の子どもって津軽弁しゃべんねっきゃ(話さないよねぇ)」と言ってきました。 障害児心理を研究する私は、「それは自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)の独特の話し方のせいだよ」と初めは静かに説明してやりました。しかし妻は、話し方とかではなく方言を話さないのだと譲りません。 やり取りするうちに喧嘩になり2、3日は口を利いてくれませんでした。こちらも長年、その道の研究職であるつもりでしたから、たとえ妻でもこんな意見は聞き捨てならず引くに引けません。 「じゃあ、ちゃんと調べてやる」 これが思いがけずその後十数年にもわたる「ことばと心の謎」に迫る研究のきっかけだったのです。 私は軽い気持ちで、知り合いの特別支援学校の先生方にこの話をしてみました。するとなんと妻の発言を支持する意見ばかりが寄
東京大学の学生は子供時代にどんなマンガを読んだのか。「プレジデントFamily」編集部のアンケートに協力した現役生249人から特に支持された16作品を紹介しよう。文学部4年でライターの布施川天馬さんは「僕に思考力の基礎がついたのはマンガのおかげ。絵があるので頭に入りやすく、知的好奇心も広がる」と断言する――。 東大生が断言「これだけは読ませていいです」頭がよくなるマンガ 子供のころから、家族でマンガを愛読していたという現役東大生ライターの布施川天馬さん(文学部4年)。思考力の基礎がついたのはマンガのおかげだそうだ。 「マンガを読めば知識が広がりますし、得た知識はその後の勉強の裏付けになります。例えば日本のマンガの人名は、英語が語源になっていることが多いですから」 上記のマンガは、東大生アンケートによりおすすめされたもの(2021年3月、「プレジデントFamily」編集部が東大生249人にW
生きる目的がないとゲームに逃げる (前編から続く) ――WHO(世界保健機構)は、ゲーム依存にゲーム障害(Gaming Disorder)という病名を付け、警鐘を鳴らしています。皆さんのようにゲームとうまく付きあえる人と、ゲームに溺れてしまう人がいると思うのですが、その違いはどこにあると思いますか? 修士課程1年生 小山このかさん/幼稚園の時、キッズコンピュータピコとたまごっちでゲームデビュー。小学校からはパソコンを使い始め、勉強にもゲームをフル活用。英語と世界史はゲームのおかげで得点源に。父親もゲーム好き。 【修士課程1年生 小山このかさん(以下、小山)】私は学生結婚をしていて夫は韓国人なんですが、韓国ではゲーム依存が社会問題になっています。政府が提供するゲーム治療の合宿所があって、子どもたちが3週間くらい泊まり込みで治療したりしているそうです。そういう話を聞くのでゲーム依存についてはよ
若者に人気のYouTube。それは視覚障害のある若者の間でも同じだ。ある盲学校の生徒たちは「YouTubeでヒカキンの番組をよく見る」という。彼らはどうやって動画を楽しんでいるのか。「Screenless Media Lab.」による連載「アフター・プラットフォーム」。第3回は「スマホの登場がすべてを変えた」――。(第3回) 視覚に頼った番組や広告が増えている インターネットの発達とスマートフォンの普及により、人が日々さらされる情報量は近年、飛躍的に増加し、情報過多の弊害が指摘されるようになった。 2018年にNHK放送文化研究所が実施した「情報とメディア利用」世論調査でも、年代を問わず多くの人が「情報が多すぎる」「情報疲れが起きている」と回答している。 いつ頃からか、テレビには頻繁ひんぱんに字幕が入るようになった。字幕機能の設定にかかわらず、番組中のすべてのコメントが字幕表示される傾向が
工事現場では必ず見かける交通誘導員とはどんな仕事なのか。70代から交通誘導員を始めた柏耕一さんは「日当は1万円程度。ただし、資格や勤務数によって手当てが割増される。ある同僚は60勤務をこなして1カ月で67万円を稼いだ」という――。 女子大生よりも安い時給で働かされるベテランたち これまで私が勤めた警備会社4社について言えば、自宅から現場への交通費が出ない会社が1社、70歳以上では日当が1000円安くなる会社が1社あったが、おしなべて9000円前後の日当を払っていた。 私はそれでも感謝していたが、同じように同僚で元営業マンの橋本は「会社が営業して、われわれに警備の仕事を取ってきてくれるんです。不満を言うなんて罰があたります」と真面目な顔をして言う。 私自身は出版編集の本業もあるので、これまで警備会社とは各社ともアルバイト契約である。社員契約の警備員は厚生年金や雇用保険料を天引きされるので、か
コロナ禍は社会にさまざまな変化をもたらした。文筆家の御田寺圭さんは「このパンデミックは市民生活における『健康』の観念を変えた。健康を目指すことが社会的な規範として要求されるようになったのだ」と指摘する――。 「アフター・コロナ」の世界で元通りにならないもの 世界ではいま、ワクチン接種が着実に進行しており、長きにわたったコロナとの戦いのトンネルにようやく光が見えはじめている。一時期はパンデミックの影響で国内最悪の失業率に沈んだラスベガスでは、ワクチンの普及が進んだ結果として市民社会の行動制限が大幅に緩和され、「ワクチン接種者はマスクの着用不要」となり、にぎやかな街のかつての日常風景が取り戻されつつある(テレ朝news『制限緩和のラスベガス マスクなしの観光客で賑わう』2021年6月2日)。 日本も遅ればせながらワクチン接種が開始され、高齢者を優先対象として急ピッチでワクチン接種が進捗している
多種多様な人を束ねるのが現代のリーダー 同じ会社、同じ部署でずっと働いてきたからといって、相手のことを十分に理解しているとは思わないほうがいい。育ってきた環境や年齢、性格によって人の考え方は十人十色だからである。 これが他部門や他社となるとなおさらである。私がかつていた携帯電話会社は、さまざまな会社からまったくバラバラの業種の人が集められた、寄せ集めチームだった。昨今では同様に、買収や合併により突然、別の会社の人たちと同じチームとして働くようなケースも増えている。さらに、パート・アルバイトや派遣社員といった異なる労働形態の社員や、日本人以外の社員も増えている。 今のリーダーには、こうした多様性の高い組織をまとめていくことが求められているのだ。 このような組織において、何もしなくても人間関係がスムーズにいくことなどまず、あり得ない。では、どうすればいいのかというと、まずは、それらの人々の「ク
32年もの間、村長の椅子に鎮座してきた 大分県東国東ひがしくにさき郡姫島ひめしま村(人口1930人、2017年3月1日時点)は、瀬戸内海にぽっかりと浮かぶ日本有数の「一島一村」の自治体である。 2016年秋、そんな島で、歴史的な事件が突然起きた。 〈61年ぶり村長選へ、来月の姫島村長選〉 同年10月18日、大分合同新聞がこんな見出しで大きく報じるなり、島には続々と報道陣が上陸してきた。8軒しかない旅館や民宿は季節外れの繁忙期に突入した。小さな村の騒ぎは大手紙の全国版でも報じられ、その名が知られることとなったのである。 姫島の村長選は1955年にあった一騎打ちを最後に、16回も無投票が続いた。その間、現職の藤本昭夫(取材当時73)は初当選時からじつに8度も不戦勝。つまり、32年も投票用紙に自分の名前が書かれたことが1度もないまま、島の主の如く村長の椅子に鎮座してきたというわけだ。
見かけなくなったキャンペーンガール 日本では水着のグラビアやヌード写真などが掲載された男性誌やスポーツ新聞を、駅の売店でふつうに購入することができます。ですがこれが許容されるのは、世界的に珍しいことだと考えるべきだと思います。アメリカなら怪しげな特別な店に行かないと手に入れることはできません。2020年に予定されていた東京オリンピック・パラリンピックを前に、大手コンビニチェーンは成人向け雑誌の販売を原則中止しましたが、今後こうした流れは広がっていくでしょう。 かつては化粧品メーカー、飲料メーカーなどさまざまな企業が、水着キャンペーンガールを自社の宣伝やPRに起用していました。大手繊維メーカーのキャンペーンガールは、モデルや女優の登竜門ともいわれ、毎年話題になってきました。しかしある時期から、キャンペーンガールという宣伝方法そのものをやめる企業や、水着の着用をことさらアピールしない企業も多く
人間が犬や猫などのペットに限らず、ソニーのロボット犬aiboにも癒やされるのは、なぜでしょうか。それは、人間が彼らと双方的にコミュニケーションが取れていると“感じることがある”からです。つまり、飼い主である人間がペットやaiboに一方的に愛着を抱いている場合がほとんどです。当然ながら、aiboに人格と呼べるような意識はありません。人間の親近感や愛着とは、極めて主観的なものです。 現在、自律的に思考できるAIの技術開発が進んでいます。また、人間と自然に会話できるAIの開発研究も進んでいます。普段、苦労なくしゃべっている私たちは気づきにくいですが、人間同士の会話は複雑な構造によって成り立っています。 人間が言葉の意味を理解するときには、その言葉以上の、あるいは以外の文脈も同時に理解しています。例えば、カップルで交わされる「大キライ」という言葉は、本当に相手のことを嫌いだから言っているのではなく
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