文字とは何か?──最古の文字とは?(6) 甲骨文の中の表音文字(借字) 文字体系が整う最も重要な条件は表音機能を具えることでした。前回取りあげたわが国の文字体系も、表音専用の文字である平仮名と片仮名が発明されることによって、ようやく土台が完成したわけで、このことを裏付けています。では甲骨文の場合はどうなのでしょう? 甲骨文は象形文字ばかりでできていますから、全て表意文字であろうと、誰もがそのような見当をつけるわけですが、しかし象形文字であるが故に死角になっていることもあるのです。それは一見表意文字ばかりに見える象形文字の中に、表意文字ではないものも混じっていることです。甲骨文の用例を見ながら話しを進めていくことにします。 現在「甲骨文」という名称が定着していますが、当初は様々な呼び方がされていました。契文・殷契・書契・貞卜文字・貞卜文・卜辞・殷墟文字・亀版文・骨刻文・亀甲獣骨文字などです。