家から歩いて5分のところにあるコンビニに向かう途中で、イナバさんに会った。イナバさんは家の前に立っていた。 最初、その人がイナバさんだとわからなかった。イナバさんの家の前に、知らないオジサンが立っていると思った。 こちらに背を向けた小太りのオジサンが振り返って初めて、それがイナバさん本人であることがわかった。 イナバさんの髪の毛は薄茶色に染められていた。風通しの良さそうな頭頂部で、薄茶色になった髪が心許なくフワフワと風にそよいでいる。 イナバさんだとわかっていたら道を変えたのに。 失敗したと思ったが、時既に遅し。ここでUターンをするのはあからさま過ぎる。ご近所付き合いのルールに反してしまう。 イナバさんは会社で偉い人らしい。だからと言って、近所では全然偉くない。なのに、なぜかとても偉そうな態度でいるから、私は日頃、イナバさんとはなるべく話をしなくて済むように気をつけている。 イナバさんはご