2018年1月のSIHHを目前にした昨年12月、A.ランゲ&ゾーネは 「1815“ウォルター・ランゲへのオマージュ”」と名付けた腕時計を発表した。1秒ごとのステップ運針を行うジャンピングセコンドという機構を持つモデルは、2017年のSIHH2日目に急逝したブランド中興の祖、ウォルター・ランゲ氏へ捧げたものだ。特殊な機構は創業者、曽祖父のフェルディナント・アドルフ・ランゲが発明し、祖父エミールが実用化、1877年に得た特許技術に由来する。 有能な子孫に継承されていた工房の伝統が暗転するのが、第二次大戦後の東西ドイツ分断である。ドレスデンは東独領となり、A.ランゲ&ゾーネの工場は国有化され、ブランドの名が消えた。その工場で時計技術を磨いていたウォルター・ランゲ氏は、動員されたウラン鉱山の労働から逃れ、西ドイツに渡ったのである。 曽祖父アドルフの技術を現代へと受け継いだムーブメント