人の性情にも体質にも万人共通の点即(すなわ)ち類性と、個人独得の点即ち個性とがあります。前代の社会心理の公準は類性のみを見て人の全部だと誤解した嫌(きらい)がありました。似た所ばかりを集めて一つの型を空に作り、その型を標準として逆に一般の人間を律しようと致し、殆(ほとん)ど人の個性というものを眼中に置いていませなんだ。例えば初めから男というものはこういうものだ、女というものはこういうものだと決めてしまい、その「こういうものだ」という概念を土台にして更に男とはこうすべきものだ、女とはこうすべきものだという規範を立てて一概に万人を律し、その規範に合わない人は人間でないように軽蔑(けいべつ)する習慣を作るに到りました。昔から支那などは習慣を重んじ過ぎる国ですから、少し新しい人が出て自己の特性を発揮しようとすると、直ぐに不忠だとか大逆無道だとかいう悪名を著せて死罪に処したりなんか致します。人が尊い