刑事事件としては不起訴になった、伊藤詩織さんの性的暴行事件。このため、本件は民事裁判で争われることになりました。前編で触れた通り、民事裁判では「証拠の優越」というルールが適用されます。最も重要な証拠とされる被害者の証言は、どのように検証されたのでしょうか? 信用できるのは、どちらの証言か? 被害者の証言が信用できるかどうかを判断するために最も重要なものは、客観的な証拠との整合性です。それが今回の場合は、判決でも触れられている「ホテルで目覚めた後の伊藤さんの行動」です。証拠関係を見ていないので断言できませんが、おそらくタクシーの利用や病院での薬の処方、友人への相談や警察への申告は、すべて客観的証拠により裏付けられていると推測されます。 その次に価値が高いのは、第三者的な立場の者による証言、たとえば本件では時間切れのために採用されなかったドアマンの証言がそれにあたります。また、証言の核心的な部
ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者だった山口敬之氏に「望まない性行為をされた」として訴えていた民事訴訟で昨年12月18日に第一審の判決が下り、伊藤さん側が勝訴しました。この裁判は日本だけでなく海外でも注目され、大きく報道されました。当初は、「なかったこと」として葬り去られそうになっていたこの事件について、今回の裁判の一連の流れをたどりながら振り返ってみたいと思います。 裁判が注目されるようになった理由 本件のような性的暴行事件が、民事訴訟で争われることで注目されるようになったのはかなり異例のことです。その原因の1つは、双方の事件に対する説明に大きな隔たりがあったこと、もう1つは本件が刑事事件としては不起訴になり、司法の場で検証される機会がなかったためだと思います。 性的暴行事件は多くの場合、知り合いや顔見知りの間で起こるものであり、事件相談の8割のケースで知り合いが加害者だと言わ
Published 2020/01/07 10:30 (JST) Updated 2020/01/18 14:40 (JST) 海外渡航禁止の保釈条件に反し、レバノンへ逃亡した前日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告(65)=金融商品取引法違反などの罪で起訴、公判前整理手続き中。米国の代理人を通じて出した声明では、日本の刑事司法制度について「有罪が前提で、差別がはびこり、基本的人権が否定されている」「国際法や条約に基づく日本の法的義務を著しく無視するものでもある」と批判している。日本のどのような制度に憤り、国際法や条約に反していると言っているのだろうか。これまでの経過と彼や弁護人の主張などから考察してみよう。(共同通信編集委員=竹田昌弘) ■逮捕4回、東京拘置所に130日 ゴーン前会長は2018年11月19日夕、プライベートジェットで羽田空港に到着直後、待っていた東京地検特捜部の係官に連行さ
「不公正と政治的迫害から逃れた。」 国外逃亡した日産のカルロス・ゴーン元会長がレバノンから出した声明だ。金融商品取引法違反などの罪に問われているゴーン元会長だが、声明は日本の制度を批判するものとなっている。今後、ゴーン氏はあらゆるメディアを使って自身の主張を展開するだろう。 確かに映画にすれば、実話をもとにトルコからの逃亡劇を描いた「ミッドナイト・エクスプレス」のような映画にはなるかもしれない。しかし、国際的に富裕層への批判は強く、ゴーン氏への理解や共感は限られた範囲にとどまるだろう。まして、ゴーン氏が過去の栄光を取り戻すことなど無理だろう。 一方で、ゴーン氏の投げかけた日本の刑事司法の制度的な問題については今後も国際的な批判は続くだろう。それは「前近代性」というところに行きつく。日本のメディアが、こうした点に触れずに検察幹部の発言を紹介する形で、ゴーン氏の保釈を認めた裁判所の対応を批判し
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く