当事者とは何か 文=岡 真理 当事者とは何かということは、日本社会に生きる者たちにとって、戦後責任という歴史的責任の問題を考える上で深くかかわる問いである。世代も境遇も異なる者たちそれぞれが過去の問題に対してどのように当事者性を分有し、それに対する責任を負っているのかという問題は、複雑であり緻密な議論を要するが、今回は、それとは全く異なった観点から「当事者とは何か」という問題について考えてみたい。 2004年10月、イスラエル占領下のガザで、通学途上の13歳の女子生徒イーマーン・ハマースがイスラエル兵に射殺された。遺体からは十数発もの弾丸が摘出され、この事件はインターネットで瞬く間に世界に発信された。イスラエル政府に対する抗議行動も呼びかけられた。 すると時を措かず、「兵士が少女を撃ったのは、彼女が通学鞄の中から爆発物を取り出し、監視兵に向けて投げようとしたからだ」という記事が登場する。こ