以前、この欄に書いたものですが、すこし思うところあって、ここに再録いたします。 ************** ファティマ・メルニーシー著/ラトクリフ川政祥子訳『ハーレムの少女 ファティマ』(未来社、1998年刊)。 拙文は11年も前に出たものですが、この本の中身はいまもって新しい! *********************** モロッコの古都フェズを舞台にした、8歳の少女の目で見た女たちの日常生活の物語。そう書くと、なんとなくわかったような気になるかもしれない。 でも、読み進むうちに、そんな思い込みは子気味よく裏切られる。 むしろ、読み手である私たちのなかには、いまだにイスラム世界の内側、ベールに隠された暮らし、といったステロタイプなイメージとして、彼女たちを「未知の世界」に閉じ込めておきたい欲望が、意識されないまま眠っているのではないか。この本を読んでから、私はそんな疑問にとらわれてい