本論文では,国際人権法の近時の研究動向を「文化」という切り口からレビューする.(1)国際法研究において「文化」を語る意義がどこにあるか,(2)国際人権法とりわけ人権条約研究において「文化」を具体的にどのように語りうるか,という2つの課題を軸に近時の諸研究を概観することを通して,国際法学において「文化」概念が持ちうる可能性と問題点とを探究する.具体的には,これまでの国際法学・国際人権法学において,どのように「文化」が捉えられてきたか,従来の研究に批判的検討を加えた上で,「文化としての人権」や「文化としての条約」といった人権条約の重層的構築の様々なレベルに位置づけながら近時の各種研究を整理する.これらの作業を通じて,本論文は,「文化としての国際法」を語りうる方法としての文化概念,すなわち,国際法実践と国際法学を通じた法的世界像の構築を1つの地理的・歴史的な文化的営為として把握しうる再帰的な文化