宮城君から私のアウトルックの受信トレイに変なメールが届いたのは、もう4、5年ほど前になるかと思う。彼は、私が自分のブログに書いた北穂高岳滝谷第四尾根の登山の記事を読んでメッセージを送ってきたのだが、それがたしか、われわれの間に起きた最初の接触だった。 私が滝谷の四尾根を登ったのは5月の大型連休の話であり、春にこのルートを登るのはとくに珍しい記録ではない。それでも彼は一応「いい登山をしていますね」と社交辞令的な口上を書き、そのうえで私の記事を読んで自分もすぐに滝谷に向かったと記していた。 彼が興味を示したのは第四尾根ではなく、その途中で私が撮影した、より登攀的なC沢右股奥壁の氷壁の写真だった。たしかにこのC沢右股奥壁の氷はなかなか挑発的なルートで、氷自体はまだ登られていない可能性があるため私もブログに載せたのだが、宮城君は写真を見て瞬時にその魅力に反応し、すぐに滝谷に向かったというのである。
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