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ブックマーク / honz.jp (17)

  • 『「日本の伝統」という幻想』時代の変わり目を前にして - HONZ

    平成の終わりが近づいている。といっても、元号が変わるだけで、生活にドラスティックな変化が訪れるわけではない。が、それでも、平成の世、もっと言えば日がたどってきた道のりに思いを馳せてしまう人は多いのではないか。受け継がれてきた行事や慣習も一つの節目だ。どんな時代が来ようと大切に守っていかねばならない、でも中にはなんかモヤモヤするものもある――もしかしたら、今こそがそうした「日の伝統」をちょっと離れて考えてみるのに最適な時かもしれない。 書『「日の伝統」という幻想』は、昨年11月末に上梓された『「日の伝統」の正体』に続く第二弾である。『「日の伝統」の正体』は、日にある伝統と呼ばれるものの多くが実は明治時代以降の発明であることを調べ分類した一冊で、発売後反響を呼んだ(詳しくは筆者のレビューと著者インタビューをお読みいただきたい)。伝統という言葉の持つ魔力を読み解かんとしたこの前作を

    『「日本の伝統」という幻想』時代の変わり目を前にして - HONZ
  • 『いつも時間がないあなたに』我々は欠乏の罠から抜け出せるか - HONZ

    書のタイトルを見て、「これはまさに自分のためのではないか!」と思い手に取られた読者の方も多いことだろう。なかなか減らない労働時間、息つく暇もない育児や介護、なくならないサービス残業、改善しないワーク・ライフ・バランス……。メディアなどでしばしば取り上げられるこれらの問題が明示しているように、日ほど「時間がない」と感じる人々がたくさん暮らしている国は、他にないかもしれない。 しかし、『いつも「時間がない」あなたに』という字面から、さぞや有効な時間活用術が書かれているに違いない、と期待に胸をふくらませながら書を読み進めるのはおすすめしない。副題の「欠乏の行動経済学」が表現しているように、書はあくまでも「欠乏」に焦点を当てた学術的内容を紹介した入門書である(実際に、原著のタイトルは欠乏を意味する Scarcity で、副題を含めて特に「時間」を強調してはいない)。時間の他にも、モノやお

    『いつも時間がないあなたに』我々は欠乏の罠から抜け出せるか - HONZ
  • 『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』 - HONZ

    その昔。今の20歳以下の人たちには理解できないかもしれないけれど、人はおカネを払って楽曲を買っていた。しかもCDというメディアに入ったアルバムというものを買っていた。アルバムの中には12曲くらい入っていて、2枚組なんていうものもあった。その前にはレコードなんていうものもあったし、私が生まれて初めて買ったのはユーミンのLPだったけど、そんなことはどうでもいい。重要なのは、そう遠くない昔、音楽は有料だったということだ。 いつから音楽は無料になったんだろう? おそらくナップスター以降と答える人がほとんどかもしれない。実際、レコード業界を破壊した犯人としてもっとも名前があがるのは、ナップスターを立ち上げたショーン・ファニングとショーン・パーカーだ。 でも、ナップスターが立ち上がる前から、音楽ファイルはインターネットのどこかにあった。ナッフ

    『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』 - HONZ
  • 『さかなクンの一魚一会』 さかなクンの夢中になる力 - HONZ

    ハコフグ帽子と白衣のいでたちに、甲高い声と大きなジェスチャーで魚の素晴らしさを伝え続けるさかなクンの自叙伝だ。絶滅したと思われていたクニマス発見の偉業は天皇陛下にも言及され、東京海洋大学の客員准教授を務めるまでになったさかなクンの人生が、さかなクンの手によるかわいい魚のイラストとともに語られる。文の漢字にはルビがついており、小さな子供でも楽しみながら読み通すことができる。もちろん、大人も飽きさせない。書には、当に何かを好きになることの苦しさ、そして、それ以上の楽しさが凝縮されているのだ。 どんな困難を前にしても、さかなクンは夢中であることをやめない。魚との毎日をとことん楽しむさかなクンの生き方に触れると、この世界が喜びに満ちたものに思えてくる。何かを好きだった熱い気持ち、最後まで全力を尽くせずに投げ出したもの、さかなクンのように生きられなかった自分が省みられて、心が揺さぶられる。ペー

    『さかなクンの一魚一会』 さかなクンの夢中になる力 - HONZ
  • 埋もれた歴史の謎を解く『漂流の島 江戸時代の鳥島漂流民たちを追う』 - HONZ

    ロビンソン・クルーソーのモデル、スコットランドの船乗りアレクサンダー・セルカーク。南太平洋の無人島に漂着した彼は、4年4か月を1人きりで生き延びた。彼が漂着した島はチリにあり、現在ではロビンソン・クルーソー島と名付けられている。著者・高橋大輔氏は、広告代理店の職を辞してセルカーク住居跡の発掘プロジェクト推し進め、13年かけて遂にそれを発見した。そんな高橋氏が日のロビンソンに興味を持つのは必然だったのかもしれない。 伊豆諸島の南端、小笠原諸島の手前に鳥島という無人島がある。直径2.7キロメートルほどの火山島で、面積は約4.6平方キロメートル。周囲を断崖絶壁に囲まれた小さな島だ。開拓の手が入ったこともあったが今では昭和に設置された気象観測所の廃墟が残るだけの島である。アホウドリの繁殖地として有名で、島全体が天然記念物(天然保護区域)として指定され、一般人の上陸が禁じられている。そんな島だ。

    埋もれた歴史の謎を解く『漂流の島 江戸時代の鳥島漂流民たちを追う』 - HONZ
  • 『レッドチーム思考 組織の中に「最後の反対者」を飼う』 - HONZ

    「どうしてこんな商品が、こんなCMが、こんなデザインが世に出てしまったのだろう?」と、私は思うことがある。おそらく、読者の皆さんにもそうした経験はあるのではないだろうか。だが、書『レッド・チーム思考 組織の中に「最後の反対者」を飼う』を読んで、ようやく腑に落ちた。 私たちは誰しも、「毎日を過ごす組織の文化に縛られ、上司や職場の好みに自分を合わせがち」だし、「長年なにかに慣らされてしまうと物事を客観的に見られなくなってしまう」のだ。それは何も、私たちが「無能」だからではない。人間の思考と行動は、常にそうしたバイアスに縛られているからだ。 自分の信念を裏付ける事実にばかり目がいくトップの「追認バイアス」。 そのトップの意向にそうことが自分の昇進になると考える「組織バイアス」。 この2つのバイアスがあるために、組織は、外部から見るととんでもない決定をし、それを執行してしまう。 では、それを防ぐ

    『レッドチーム思考 組織の中に「最後の反対者」を飼う』 - HONZ
  • 『外道クライマー』スーパーアルパインクライマー宮城 解説 by 角幡 唯介 - HONZ

    宮城君から私のアウトルックの受信トレイに変なメールが届いたのは、もう4、5年ほど前になるかと思う。彼は、私が自分のブログに書いた北穂高岳滝谷第四尾根の登山の記事を読んでメッセージを送ってきたのだが、それがたしか、われわれの間に起きた最初の接触だった。 私が滝谷の四尾根を登ったのは5月の大型連休の話であり、春にこのルートを登るのはとくに珍しい記録ではない。それでも彼は一応「いい登山をしていますね」と社交辞令的な口上を書き、そのうえで私の記事を読んで自分もすぐに滝谷に向かったと記していた。 彼が興味を示したのは第四尾根ではなく、その途中で私が撮影した、より登攀的なC沢右股奥壁の氷壁の写真だった。たしかにこのC沢右股奥壁の氷はなかなか挑発的なルートで、氷自体はまだ登られていない可能性があるため私もブログに載せたのだが、宮城君は写真を見て瞬時にその魅力に反応し、すぐに滝谷に向かったというのである。

    『外道クライマー』スーパーアルパインクライマー宮城 解説 by 角幡 唯介 - HONZ
  • 完全食品ソイレントが突きつけるもの - HONZ

    『ニューヨーカー』の2014年5月12日号に、「ソイレント」という液状品に関する記事が掲載されました。軽~く興味を引かれて読み始めたところ、ちょっと意外なぐらいに、われわれの「」について考えさせる内容になっていたので、ご紹介してみます。 液状のべ物というのは、昨今、それほど珍しいわけではありません。減量したい人のダイエット品にも、ドロドロした飲むタイプのものがありますし、筋肉増強したい人のためにも、タンパク質メインの飲み物はあります。しかしソイレントがそれらと異なる点のひとつは、完全品を謳っている点です。これだけを摂取していれば、ほかには何もべなくてもよいというのです。 ソイレントを考案したのは、ロブ・ラインハートという青年で、品関係というよりむしろ、ITとかSNS系の起業をやりそうな感じに見えます。実際、ラインハートは、ジョージア工科大学卒業後、友人二人とともにIT関係のス

    完全食品ソイレントが突きつけるもの - HONZ
  • 『第五の権力 Googleには見えている未来』 - 拡張現実型の未来予測 - HONZ

    この地球上で、国家のリーダーとしての視点から”今”を語れる人というのは195人ーーすなわち世界の国の数と等しいだけの人数が、少なくとも存在する。それでも、その言説の多くは現実空間のものに限定されてしまうであろう。 これを仮想空間に置き換えて考えてみると、どうなるだろうか。国家規模の広い視点から”今”を語れる人というのは、世界に数人しか存在しないのかもしれない。いわゆるAppleGoogle、Facebook、Amazonといった超国籍企業のトップたちである。 その中の一つ、Google社のCEOを長らく務め、現在会長の座に収まっているのが、書の著者の一人、エリック・シュミットである。まるでSFの題材のような世界を、現実的なビジネスと捉えて分け入っていくGoogle社。その会長が予測する未来となると、否が応でも期待は高まる。 未来予測である以上、どのような歴史観に立脚しているのかというこ

    『第五の権力 Googleには見えている未来』 - 拡張現実型の未来予測 - HONZ
  • 『ウェブ社会のゆくえ』 地元とジモトと私とワタシ - HONZ

    書において、著者は、日常生活の様々な場面においてウェブへのアクセスが発生する現在の状況を「現実空間の多孔化」と呼び、そのような状況が、社会にどのような影響を及ぼしているかを考察する。 書は、当初はAR(Augumented Reality)等の「現実世界とネットの情報を紐づける技術」について社会学的に考察することを想定していた。しかし、その後、東日大震災が発生し、より抽象度の高い問題を扱う方向に内容が練り直された。「現実空間の情報化が進むことで人々の間がますます分断されていく」という問題設定が、より重要な意味をもつようになったのだ。結果的に書は、個人のみならず地域レベルの集団が、どのようにすれば「共同性」と「記憶」を保持できるか、という課題に向かう。キーとなるのは、自分の活動が自分にフィードバックされる「再帰性」だ。 第一部では、「現実空間の多孔化」の概念について説明される。スマー

    『ウェブ社会のゆくえ』 地元とジモトと私とワタシ - HONZ
  • 『職業治験』治験だけで生活をするプロの生態 - HONZ

    このは治験だけで生活をする男の体験記である。初めての治験から、プロ治験者の第一人者「教授」との出会い、「教授」を介した裏ルートでの治験、海外での治験、プロ治験者の末路など、著者が経験した出来事をまとめただ。これがとてもおもしろく最後まで一気に読んでしまった。治験というある種グレーな世界が、こんな風になっているとは……という驚きとともに、きっと治験の世界に興味をもつことになるだろう。 新薬を開発するためには治験が欠かせない。治験というのは薬を世に送り出すために必要な臨床試験のことである。何百回にも及ぶ動物実験で安全性を確認したのち、薬効と副作用を調べるために行われる人体実験のことだ。第一段階の治験では、健康な成人に薬の成分を薄めたものを投与してデータを取る。薬効の確認というよりは、重大な副作用がないかどうかといった安全性を確認すること。また薬が体内に入ってから出るまでの時間、すなわち薬物

    『職業治験』治験だけで生活をするプロの生態 - HONZ
  • センスがいいってどういうこと?『センス入門』 - HONZ

    「センスがいいね」と言われたら、私はとても嬉しい気分になる。「センスがいい」というのは、生き方そのものを肯定されているような気がするし、最高の褒め言葉だと思うのだ。でも「センスがいい」ってどういうこと?と聞かれても、その定義を明確に答えることができない。 なんとなくイメージはできても、センスというものはうまく言語化ができないものだ。私は大のファッション好きなので、ファッションの観点からいうと、センスのいい人というのは、ジーンズに白いシャツというようなシンプルなスタイルを、さらっと着こなしている人を思い浮かべる。華美なデザインの服で着飾ったり、奇抜な格好をしたりするのは、オシャレではあっても、センスがいいとはいえない。 著者は「昨日、センスのいい人に会った。」といったときに、その人が実際に何を着ていたのか、思い出せない人こそセンスがいい人だ。といっている。確かにそうかもしれない。何を着ていた

    センスがいいってどういうこと?『センス入門』 - HONZ
  • 『漂白される社会』 - 色物、色事、色眼鏡 - HONZ

    「何か」がおかしいのは分かっている。でも、その「何か」がよく分からないからもどかしい。売春島、偽装結婚ホームレスギャル、シェアハウスに貧困ビジネス。自由で平和な現代日の周縁に位置する「あってはならぬもの」たち。それらは今、かつて周縁が保持していた猥雑さを「漂白」され、その色を失いつつあるのだという。 著者は、『「フクシマ」論』でおなじみの社会学者・開沼博。私たちがふだん見て見ぬふりをしている闇の中で目を凝らし、現代社会の実像を描き出す。書のベースとなったのは、ダイヤモンドオンラインでの連載でも好評を博した「闇の中の社会学」シリーズである。 明治以前から売春を生業とする島 その孤島では、島の宿に宿泊するか、あるいは置屋に直接赴くかすれば「女の子」を紹介される。「ショート」の場合は一時間で2万円、「ロング」がいわゆる”お泊り”を指し4万円。女の子の割合は日人と外国人が半々か、やや外国人

    『漂白される社会』 - 色物、色事、色眼鏡 - HONZ
  • 『弱くても勝てます』 超進学校の「異常な」セオリー - HONZ

    住大夫の自伝である。おなじみ日経済新聞「私の履歴書」の書籍化だ。ちなみに近年「私の履歴書」で最も面白かったのは李香蘭すなわち山口淑子だった。書は次点だが、経営者の自叙伝の何十倍も面白い。何万倍かもしれない。つまり経営者の自叙伝などはことごとく面白くない。そういえば佐野眞の『甘粕正彦 乱心の曠野』などは李香蘭の自伝を読んでからのほうがはるかに面白いはずだ。話が脱線した。 竹住大夫は義太夫節の大夫である。三味線弾きと二人で人形劇である文楽に登場し、物語の一切を語るのが大夫だ。住大夫はその最高峰なのだ。もちろん人間国宝だ。義太夫節とは大阪弁丸出しのダミ声でわめくような感じの日独特の歌唱法である。あまりに独特なので初めての人は面らう。ともかく何を言っているのかさっぱりわからない。しかし、慣れてくると、これがじつに素晴らしいのだ。 ところで書によれば、竹住大夫は奈良の薬師寺の故高田

    『弱くても勝てます』 超進学校の「異常な」セオリー - HONZ
  • 『新・脳と心の地形図』 -脳の地図には竜の家? - HONZ

    書は12年前に刊行されたのリニューアル版だが、いろいろな意味でおすすめだ。まず、当然ながら内容が良い。前回出版時には予想外に教科書として採用されたらしいが、実際、入門として適している。というか私には「入門として適していることしかわからない」のだけれど、専門用語を使わずに、大変広い範囲をカバーしていると思う。また、フルカラーのCG画像がとても多く、見ていて飽きない。製もしっかりしている。最近ちょっとに対する金銭感覚が麻痺しているのを考慮しても、これで2500円とはえらく安いのではないか?ペイするのだろうか?原書房、グッジョブ。 さらに(副代表 東えりかのような)マニアの皆様におかれましては、6章の章題と各ページのフッターが間違えているところが高ポイントかもしれない。レアものをゲットした、自分、グッジョブ(違うか)。 脳科学の世界は日進月歩だ。fMRIなどのスキャン技術は進歩し続

    『新・脳と心の地形図』 -脳の地図には竜の家? - HONZ
    microgravity
    microgravity 2012/03/10
    へー「落ち込んでいる時には、左脳が担当する活動に集中すると、右脳の情緒的反応が抑制されて悲嘆がやわらぐ。」
  • 『郊外はこれからどうなる?』新刊ちょい読み - HONZ

    都内及び首都圏で引っ越しを検討しているなら、住宅情報紙を読むよりも、まずは書を読むといいんじゃないか!? 20代か30代の女性に聞いたところ、今郊外に住んでいる人が10年後にもあんまり郊外に住みたいと考えていないようだ。傾向として、地方に住みたいという割合が多い。郊外では若者の定住意識が弱い。多額のローンを組んで、念願のマイホームを建てたお父さんとしては、娘が家には住みたくないという事実を突きつけられるのはやりきれない思いがあるだろう。さらに、多額のローンを払い続けられるかを心配しなくてはいけない。このように、郊外の未来のシナリオは前途多難。もちろん、書でも触れているように明るい兆しもないわけではない。 著者の三浦展氏はパルコが出版していたマーケティング情報誌『アクロス』の元編集長。今はこちらで展開中。当時、パルコは所沢への出店を検討しており、その裏付けとして行った徹底的なマーケティン

    『郊外はこれからどうなる?』新刊ちょい読み - HONZ
  • 1万年のビッグデータ -『パンドラの種 農耕文明が開け放った災いの箱』 - HONZ

    今、世のビジネスマンが一番多く見聞きするキーワードは「ビッグデータ」というものではないだろうか。巨大なデータを収集・分析してパターンやルールを見つけ出す。その上で、今を描き出したり、異変を察知したり、近未来を予測するために活用されるものだ。世界中で生成されるデータの増加とともに、ビッグデータへの注目度は一気に上がってきた。 書で描かれている内容も、ある意味においてはビッグデータの活用ということになるのかもしれない。とは言っても、ネットの普及以降に集められた20年分くらいのデータ量によるものではない。我々人類の来し方、行く末を語るためには、1万年くらいのスパンによる情報が必要であったのだ。このとてつもなく長い歴史をデータマイニングした結果こそが、書の成果になっていると言える。 約1万年ほど前、その先の何世代も後にまで影響をもたらすような種が蒔かれた。ヒトは定住を始め、農耕を編み出したので

    1万年のビッグデータ -『パンドラの種 農耕文明が開け放った災いの箱』 - HONZ
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