「ヨーロッパで一人の婦人がたいへん重い病気のために死にかけていた。その病気は特殊な癌だった。彼女が助かるかもしれないと医者が考えるある薬があった。それはおなじ町の薬屋が最近発見したラジウムの一種だった。その薬の製造費は高かったが、薬屋はその薬を製造するのに要した費用の十倍の値段とつけていた。かれはラジウムに二百ドル払い、わずか一服分の薬に二千ドルの値段をつけたのである。病気の婦人の夫であるハインツはあらゆる知人にお金を借りに行った。しかし薬の値の半分の千ドルしかお金を集めることができなかった。かれは薬屋に妻が死にかけていることを話し、薬をもっと安くしてくれるか、でなければ後払いにしてくれるよう頼んだ。だが薬屋は「だめだ、私がその薬を発見したんだし、それで金儲けをするつもりだからね。」と言った。ハインツは思いつめ、妻のために薬を盗みに薬局に押し入った。 」