「明日、仕事がないやつは朝までな」 テーブルの上にビールを置いたコースケは、母屋に向けて手を合わせ、いつものように白い歯を見せた。 亡くなったツヨシの爺さんの意向により、親族席に座ったコースケは、式の間中ずっと泣いていた。 小学校から付き合いのある彼の泣き顔を見たのは、その時が初めてだった。 「九十二歳、大往生だよ」 コースケからビールを受け取ったツヨシは、一度上に目をやって、タバコに火をつけた。 「間違いない、大往生だ」 ケイゴは回ってきたビールを横のリーダーに渡し、レモンティーのペットボトルを開けてから落書きだらけの壁をさすった。 「こんなに自由になんもかんもやらしてもらってな、正直、お前の爺さんには頭が上がらねーよ。俺ら全員、土下座もんだよ、本当に」 リーダーの言う通り、ツヨシの爺さんにはいくら感謝してもしきれない。 みかん畑を持つツヨシの家の敷地内にある、作業用のプレハブ小屋。 爺