「帝国の慰安婦」の著書で知られる韓国・世宗大の朴裕河(パク・ユハ)教授は、植民地支配に向き合う日本の姿、すなわち「謝罪も補償もしない、責任逃れの日本」のイメージが1990年代以降、韓国内で学問上拡散され、定着してきたことが、悪化の一途をたどる現在の日韓関係をつくってきたと指摘する。そのうえで教授は、こうした構造的要因に着目し、歴史認識をめぐる「議論のずれ」を念頭に置いて、次世代のために両国が向き合うよう提案する。 不安定な「ファクト」 歴史葛藤をめぐって「ファクト」を見るべしとする人々がいる。最近日本でもベストセラーになっている「反日種族主義――日韓危機の根源」などもその一つといっていいだろう。もっとも、「事実」を確認することは基本的には重要だ。しかしこうした考えに陥穽(かんせい)がないわけではない。まず「事実」なるものの中身を提示するのは、多くの場合学者であるが、そうした意見が学問という