この試合、優勝は遠のいていたとはいえ松井秀喜の本塁打王、ルーキー・上原浩治の20勝がかかり、スポーツ紙には“1面ネタ”のゲームだった。 7回1死、打席には来日1年目のヤクルト・ペタジーニ。ベンチからは大きな指示はなかった。コーチが一塁を指さしたり、捕手を呼んだりすることもなかった。 松井は2打席、敬遠されていた。ペタジーニが打席に向かうと「ここは敬遠だな」と他社のカメラマンがつぶやいた。 選手がベンチからの指示やサインを見ているとき、カメラマンはその様子を必ずチェックする。シャッターチャンスのヒントがあるからだ。長嶋茂雄監督は動かず、座ったままだった。佐野元国バッテリーコーチがそっと敬遠のサインを出した。 「勝負しろ!」 ヤクルトファンのヤジが飛ぶ。外角高めに4球目を投げ終え、上原はレフト方向を向き右足でマウンドを蹴り上げた。カメラマン席ではどよめきが起こった。 気持ちを必死に抑えホームを
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